ペイントジーニアス〜2013仁王誕生日〜
(あれ?あの髪色はもしかして…)
「やあ、こんにちは。こんな場所で会うなんて奇遇だね」
落ち葉が舞い、北風が一段と冷たくなってきた12月初旬。
期末試験を間近に控えた僕は、気分転換に都内の美術館に出かける事にした。
「!?」
「お前さん青学の」
「不二だよ。不二周助。…全国大会では世話になったね」
美術館に行く為電車を乗り継ぎ駅に降りた。
駅に隣接するデパートからはクリスマスムードが漂い、カップルや家族連れやらとにかく人が多かった。
そんな中、目に飛び込んできた紅白頭2人に声をかけると面白いぐらい驚いていた。
「…」
「そういえば今日は君達だけなのかい?」
「まあな」
悔しそうな表情を浮かべた銀髪を無視して会話を振れば、呆れながら赤い髪の彼がガムを膨らませながら答えた。
「へえ。意外な顔ぶれだな。ダブルスパートナー同士が仲良いと思ってたから。」
うちのゴールデンペアみたいにさ。
そう笑うと、今度は赤い髪の彼がガムを割ると不機嫌そうな顔をする。
なかなか2人とも感情が素直で面白い。
「ええじゃろ別に。それに俺らはクラス一緒やけ、たまにはつるむ事もあるぜよ」
「へえ」
「じゃあ、オレらそろそろ行くわ」
同じく不機嫌そうに答えた仁王の返事に興味を持ったのも束の間。
丸井が会話を終わらせようとしたものだからますます興味が湧く。
「どこまで行くんだい?」
「…」
「…」
ちょっとした好奇心で尋ねたものの、2人は視線を合わせるとお互いに口籠もってしまった。
「(…お前言えよ)」
「(いやいや言えんじゃろ、これから誕生日プレゼントにブン太とラブラブデートですーとか)」
「(じゃあどうすんだよ、もー)」
「あ、」
「何?」
「すまんが幸村から電話じゃ」
突然何かを思い出したように携帯を開くと、仁王は背中を向けて少し離れると電話を始めてしまった。
残された丸井は唖然としたようにその背中を見ていたが、僕の存在を思い出したのか苦笑を向けた。
「わりぃな。そういうお前はどこ行くんだよ」
「僕は姉さんから美術館のチケットを貰ってね」
「へえ」
会話が続かないのは仕方がない。
しばらくして電話を終えた仁王が戻ってくると笑顔を丸井に向けた。
「すまんのぅ不二。幸村から緊急収集かかったなり」
「それは残念だな。幸村くんにもよろしく伝えておくよ」
「じゃ、そういう事で」
仁王の言葉に安心したらしい丸井は軽く手を上げるとさっさと歩き出した。
その背中を追う仁王もどこか満足そうでこちらもつい笑みが零れた。
「“伝えておくよ”って言ったんだけどね」
携帯を取り出すと待ち合わせ場所を確認する。
人混みの中、すらりとした人物がこちらに手を振りながら駆け寄って来た。
「やあ、不二。今日はチケットをありがとう。お姉さんにもお礼を伝えておいてくれないかな。苦労をかける」
「気にしないで。ところでさっき、君のどこの仁王と丸井に会ったよ。何でも君からの緊急収集がかかったらしいけど」
電車に乗ろうとホームに向かい、先程のよろしくを伝える。
「へえ…それは緊急収集かけて良いって事かな」
反対のホームに見つけた話題の2人。
どうやらこちらには気付いていないらしい。
『俺の目の前でイチャつくなよ』
メールが届いた途端周囲を確認し始めて。
そしてこちらに気付き固まった瞬間を、僕は心のシャッターで収めたのだった。
おわり
仁王アルバムもブン太アルバムもゲストに不二…。
アルバム楽しみです!
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