捨てられないモノ。

包み紙を開くとガムを1つ口に入れる。


ゴミとなるその紙はブレザーのポケットへ。










自分でも女々しくて嫌になる。

いつしか付いた変なクセ。

ガムの包み紙に、好きな奴への想いを綴ると家に帰ってからクシャクシャに丸めてゴミ箱へ捨てるのだ。


そして翌朝にはリセットされた気持ちで同じ事を繰り返している。

…結局のところ、この気持ちを捨てきれない。





諦められないなら告白をしろ、と言うのが一般的な励ましだと思う。

しかしオレの場合、当たった途端砕け散る結末しか見えない相手なのだ。











「ブン太、昼行くぜよ」

「ああ」



『今日も仁王と昼飯。』

『オレの弁当の卵焼きうまいって!すげー嬉しい』



「ゴールデンウィークも練習で終わったのぅ」

「仕方ねえだろぃ、もうすぐ大会始まるんだし」

「どこか行きたいなり」



『オレも仁王と出かけてみたいよ』

『彼女いるとか?』



「…何、彼女とか…?」

「いや、彼女おらんけど」

「ふーん」

「ブン太、ガム1つくれん?」

「ん」



モヤモヤしながら相槌を打っているとそう言われたからポケットに手を入れる。


「…あれ?」

「どしたん?」

「いや、見当たんねえ…ラス1あったはずなんだけど」

「ないなら良かよ」


両方のポケットを探るもガムがない。


「ブン太、ガムあるやない」


「へ?」


その言葉に仁王に視線を向けると、オレのポケットからはみ出た空の包み紙を取り出していた。


「ん?何も入っとらんのか」


ビラッと捲る仁王の行動に冷や汗が流れる。


「あっ、それは…」


「……」


やばい、絶対気持ち悪いと想われた。


もっと早く、この気持ちも捨てられれば良かった。


「…仁王、ごめっ、」


「何じゃガム以外のもん詰め込んで」


自分の女々しい行動に涙が浮かんで謝れば、仁王はどこか嬉しそうに笑って頭をポンポンと撫でてくる。


「にお、」


「こんな紙切れに詰め込まんと、ちゃんと言わんとわからんぜよ」


そう言った仁王が見せた包み紙には
『仁王が好きだ』
と、誤魔化しようのないオレの気持ち。


「…お前は、どうなんだよ…」


恥ずかしくなって顔を俯かせて問い掛ける。


「そりゃもちろん、」





ちゅっ。




「ラス1のガム貰ったぜよ」


驚いて固まるオレを余所に、仁王は風船を膨らませながら寝転んだ。








おわり







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