出会えた奇跡〜2013丸井誕生日〜
「オレ本当は予定日8日だったんだって」
「随分遅れたんやね」
「だな。初産だし、母さんや父さんも不安だったっつうのは聞いた」
4月20日。
丸井ブン太16歳の誕生日。
家族が出かけた家の中で、仁王と2人甘い時間を過ごしている。
誕生日とあってアルバムが見たいと言いだした仁王の要望で、両親の部屋から分厚く大きいアルバムを引っ張り出してきた。
ベッドに寄りかかる仁王の足の間に座り、後ろから抱き締められる形でページを開いていると、時折髪を梳かれたりキスをされたり。
付き合い出した中2の頃は、そんな雰囲気や行為に終始照れっぱなしだったな、とどこか懐かしい気がする。
(こうやって座ってもすっぽり落ち着いたしなー
少し窮屈に感じるようになったこの座り方に、お互い高校生になったんだと実感する。
生後間もない無防備な姿の写真を見て、変な笑いを零す仁王に肘鉄し、家族旅行の写真に今の面影を見たり、テニスを始めたばかり頃の写真に思い出話をしたり。
そう思い返すと、自分の人生のまだ4年しか一緒にいないこいつがこんなにも自分の中で大きな存在になるなんて。
「仁王、ちょっと腕どかして」
「ん?」
「いや、座り直したい」
「ああ」
そう言うと仁王は絡めていた腕を外してニコニコと笑っている。
「ブン太大きくなったね」
「…嫌味かコラ!」
「違うぜよ、付き合い始めた頃はこうやって座った時小さくて可愛い思ってたのが、すっかり逞しくなったなーって」
「……じゃあ抱かせろよ」
「それとこれとは別」
親戚のおじさんみたいな事を言い出した仁王に、普段の立場上の不満を漏らせば一瞬真剣な顔をして断られた。
「ん、」
アルバムを閉じた仁王が腕を広げるので、今度は向き合う形で座り直す。
「オレさ、もし予定日より1週間早く産まれてたら仁王と学年違ったんだなって」
「そうやね」
「そしたらテニスしてなかったかもしれないし、立海にも行ってなくて…仁王と知り合ってなかったかもしれない」
「おん」
抱き締めてくれる仁王の髪を梳きながら、愛しい気持ちでいっぱいになる。
「…だから、オレは今日産まれて、テニスして立海行って仁王と出会えてる今が幸せだよ」
「俺もブン太と出会えて幸せ」
そう言った仁王が瞼を閉じたから。
愛しい気持ちが溢れるままにキスの嵐を。
「16歳の誕生日おめでとう」
「うん」
「あと2年待っててねブン太」
気付けばそのまま横に倒れていて、見上げれば仁王は優しい顔で笑っていて、その言葉にドキリとした時には左手の薬指にキスをされた。
「産まれてきてありがとう、ブン太」
おわり
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