おめでとう。
「1枚くれ」
「兄ちゃん珍しいのぅ」
「…ぷりっ」
部屋のドアをノックして入ると、弟からハガキを受け取る。
意外そうな視線を向ける相手に居心地が悪くてさっさと部屋を出ると自室へと戻った。
「……」
何を書こう。
今まで年賀状なんて貰うばかりで送った事はない。
毎年律儀に送ってくる部活仲間達には返事を寄越せと呆れられているが一応メールはするのだから勘弁して欲しい。
それでも春には卒業を控えた今だからこそ送りたいのだ。
しかし、そもそも来年は何年だったか…。
そういえば弟の机にヘビ柄のスタンプがあった事を思い出して椅子を立つ…が、また面白そうに見られては適わないので仕方なく描く事にした。
絵心のないヘビといつもの一言。
そして『これからもシクヨロ』
照れ臭くて言えない言葉はわざと小さく隅に書いた。
それでもブン太ならきっと気付くだろう。
「我ながらひねくれとるな…」
書いたハガキを見返して苦笑してしまった。
初詣がてら届けに行こうか。
(ブンちゃんちおらんかった…)
(…兄ちゃん、新年早々辛気臭いのぅ)
(……ほっとき)
おわり
そして直接ポストに投函して来た仁王…(笑)
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