あけまして。

家族で初詣から帰宅すると、ポストを開けた。



届いていた年賀状を自分宛ての物だけ抜き取ると父親に渡し、部屋へとこもる。

除夜の鐘が鳴り終わると共に親しい友人や部活仲間達に一斉にメールを送ったものの、やはりこうして手元に残るハガキとして受け取ると何だか嬉しい気持ちになった。



やたら達筆で書かれた真田からのハガキに思わず吹き出し、きれいな文字で今年のオレへの課題がつらつらと書かれた柳のハガキに焦り、シールやハンコで色鮮やかに飾られた幸村くんのハガキに安堵し、お洒落な写真がプリントされた柳生からのハガキには感心した。

ジャッカルは年賀状を書くと言った習慣がないようで、知り合った時から学校で会った時に挨拶をする。

赤也はマメに書くタイプではないから、毎年メールで終わりだ。

他にもクラスの友人達からも届いていたが、最後の1枚は仁王からだった。





珍しい。

仁王はそれこそ他人とあまり踏み込んだ付き合いは好まないらしく、この3年間で初めて貰った年賀状だ。



好きになって、お互い恋人として付き合い始めて、ようやく理解出来た部分もあるものの、こうして年賀状を送られるとは思っていなかった。
少し緊張しながら裏面を見れば見慣れた汚い字で真ん中に『ピヨッ』の一言とミミズが這ったような線が一つ。

どうやらヘビのつもりらしいが、そもそも酉年じゃねぇだろ!と呆れながら何だか嬉しい。


「ん?」


ついまじまじと眺めているとハガキの隅がキラキラ光った。
目を凝らすと薄らと小さな文字で『これからもシクヨロ』の文字。


「バーカ…」






これは返事を書かねばならないだろう。
始業式の日、わざとらしく下駄箱に入れてやろうかな。

そんな事を思いながら緩む頬を引き締めて、父親に白紙のハガキを貰いにリビングへと降りて行った。






(兄ちゃん酔っ払ってる〜)
(えっ!)
(父さんみたいに顔赤いよー)
(ちげぇよ、外寒かったからだっつうの!)







おわり

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