流行りも廃りも関係なく。
「なあなあ、仁王は今年どれだと思う?」
部活を引退し時間に余裕が出来るようになって、朝の情報番組を見てきたらしいブン太の話題は、今年の流行語大賞の予想だ。
「うーん…『オーケイ』かの」
あのどこかフワフワした雰囲気を意識しながら頬にポーズを付けて答える。
「ちょっ、ポーズ付きとか!」
ブン太が飲んでいたジュースを吹き出した。
「…大丈夫かブン太」
「おぅ、へーき…。つうか、仁王んちの姉ちゃん似てるよなぁ」
「そうかの?」
言われてみて考えてみる。
俺の姉貴はあんなにフワフワしていない。
まあ見た目の印象は何となく似てなくもないかもしれないが。
「ところで、ブン太は何だと思うん?」
「やっぱ『ワイルドだろーぃ?』」
「…何か違うじゃろ」
「そうだっけ?」
とぼけて笑うブン太が可愛い。
そう思って見つめ返していると予鈴のチャイムが鳴った。
「今日の帰り、うち寄ってくれん?」
「え?」
「ブン太を手ぶらで返すわけにいかんから」
意味深に言葉を続ける。
「…オレ手ブラなんかしねえからな」
「ほー…オカンが菓子の貰い物したから分けちゃろう思っただけなんに」
意味深に受け取ったブン太の頬が赤くなる。
クスクス笑いながら、廊下に担任の姿を見つけて椅子の向きを直す。
「仁王のバーカ」
ブン太の悪態を可愛く思いながら、今日も授業が始まった。
おわり
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