並んだ足跡
「おはようさん、昨夜はだいぶ雪積もったのぅ」
改札の中を眺めていると、人混みに待ち人の赤い頭を見つけた。
「…はよ。珍しいじゃん、お前が先来てるなんて」
「たまにはな。ところで何で機嫌悪いんよ?」
既に雪が溶け始めてきた道を、学校に向かい歩きだす。
「だって雪積もるとかマジないって!寒いだけだし!」
そう言ったブン太は、確かにいつもより防寒対策をして来ているように見える。
「意外やね、ブン太はしゃぎそうなんに」
年の離れた弟達と一緒に遊んでいそうな、そんな気がしていた。
「…どうせガキみたいですー」
「まあ俺は好きやけどね雪」
「へー、お前の方が意外」
余程寒いのか手袋をした手に更に息を吹き掛けている。
「寒いのは嫌い。でも雪はワクワクするじゃろ?」
「まったく?つうかワクワクとかお前のキャラじゃなくね」
「酷っ。俺かて純粋無垢な中3男子なんじゃ」
「男抱いてるくせに何が無垢だよ…。…けど、まあ…いつもより仁王とくっついて歩けるから、たまにならいい…かな」
「え?」
聞き返してる間に手を握られた。
「いや。せっかくだから足跡付けて歩こうぜ」
そう笑ったブン太はやはり嬉しそうで。
「おん」
まだ汚れていない真っ白な雪の上。
2人の足跡が寄り添って続いた。
おわり
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