視線はきっとレーザービーム
(まあオレにはなんねえよな)
そう思いながら適当に、頭の良いクラスメイトの名前を男女1人ずつ書いた紙を教卓に置かれた箱に入れると席に戻った。
(…あ、まただ)
席に向かう途中視線を感じて教室内をチラリと見渡す。
LHR中の教室は、みんな席を立ち友達と話していたりと騒々していて、それなのに辿り着いた視線の先のクラスメイト――仁王雅治――は、自分の席からこちらを眺めていて、オレと目が合うと静かに笑うだけだった。
「はい、みんな決めたか?それじゃ目閉じて」
先程の投票で名前の上がった奴らを黒板に書き出すと、騒がしかった教室に担任の声が響く。
「まず女子からなー」
自分が誰を書いたかもう忘れたが、とりあえず上げておく。
「次男子」
「丸井ブン太」
自分の名前が書かれていた事はわかっていた。
しかし自分が選ばれるとは思っていなくても、いざ呼ばれるとドキッとする。
「それじゃあ3学期の学級委員は木村と須山で頼むな」
黒板を見るとオレには1票だけ入っていた。
予想外の少なさに内心ショックを感じながら、チャイムが鳴り席を立つとまた感じる視線。
見渡さなくても誰かなんてわかる。
実を言うと、学級委員の候補に名前が挙がったのは初めてではない。
1学期こそ、テニス部で名の知れてるオレへの挙手もそれなりにあった。
しかしクラスを纏めるなんて柄じゃないし、他の候補者より少なかった為選ばれる事はなかった。
それでも。
2学期の時も同じようにオレの名前は挙がった。
しかし挙手人数は激減し、1学期と同じ2人が選ばれていた気がする。
そして今回。
「おい!」
「丸井、どしたん?」
「どしたじゃねえし。お前オレに何が言いたいんだよ」
同じクラスになってから半年以上が過ぎ、こうも何かと見られていては気になって仕方がない。
放課後の教室で仁王に問い詰める事にした。
「何よ突然」
「突然じゃねえよ、お前オレにしょっちゅうガン飛ばしてんだろ!何だよ、はっきり言えよ!」
「…ガン飛ばしたつもりはないんやけど」
今だはっきりしない相手にイライラする。
「じゃあ何だよ?」
「…俺丸井の事好きなんじゃ。だから寧ろ、ロックオンみたいな感じ?」
そう言った仁王は、大阪のクネクネ野郎のマネをしながら、指で囲んだ目からオレに視線を向けた。
「…はあ?!えっ、何、お前ホモ?」
「…違うわボケ。俺は丸井って可愛えなあ思ってたら、いつの間にか好きになってただけ」
「だからそれがホモだって。つうか可愛いとか言われてもムカつくんだけど」
「えー、丸井は俺ん事格好良いとか思わんの?」
「わんな」
「うわーショック…新学期早々失恋するとは思わんかったぜよ…」
おどけながら話していたかと思えば、さすがに落ち込んだらしく机に顔を伏せてしまった。
「何、マジなわけ?」
「…おん」
「…オレ別にお前の事嫌いじゃねえよ」
「そか」
「ただ、いつもあんまジーッと見られるのはイヤって事が言いたくて…」
「ん、」
「だから、まあ…これからも今まで通り…さ…」
「…そうやね」
そうして、顔を上げた仁王は微笑んでいた。
「ブンちゃん!」
「またお前かよ…うぜー…つうか近いんだけど!」
「ええやない、俺とブン太の仲なんやし」
「キモイ!つうか馴々しく名前呼ぶな!」
「3学期になってから、仁王と丸井って何か仲良いよねー」
(うああぁ〜…誤解されてんじゃねえかよー!!)
(狙い通りだっちゃ)
おわり
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