夏の終わりに

「ぶっ!?ちょっ、何?!」

「虫除けスプレーなり」


仁王に突然、全身に何かを吹き掛けれた。

ガム食べてたから口にまでかかって、すごい不味い…。


「口入ったじゃん!突然何すんだ、バカ」


「ブンちゃん知っとる?蚊って暑い時より涼しくなってからのが多いんよ」


「…へーあっそ。でもオレBだからあんま刺されないし」


そう言うと仁王は盛大なため息をついた後、すごい真顔で爆弾を投下した。


「…ブン太わかっとらん。俺はブン太に、俺以外が吸い付いた跡が付くんがイヤなんよ」


何でこいつの言い出す事は毎回アホらしいんだろう。


「だから護身用にコレ持ち歩いてほしいんじゃ」


そう言うと仁王は、今度はラケットバッグを漁りだした。


「光るラケットー」


「………きもい」


猫型ロボット風に取り出した仁王は、ペテン師としては失格な程真似出来ていなかった。


「…光るラケットってあれだろ?お前が全国大会で負けた時に不二が、」


「…イヤな事思い出させんといて」



うわ、ちょー睨まれたし…。

「わりぃ…。で、これ何?」


「これを、ブン太を狙うヘンな虫が来たら」


仁王がラケットを持ちながら説明し始めたけど、正直かなりどうでもいい。
つかそもそも、護身用とかヘンな虫って何だし。


「ここを押して、振る、当てる!」


「光ったー!!」と嬉しそうな仁王はおもしろいけど、あんなに声高く饒舌に話すのはあまりにキャラが違い過ぎる。


「あっ、ブン太!ラケット持ち歩きんしゃい」


面倒くさくて先に部室を出ようとしたら気付かれた。


「いった!ちょっブンちゃん!」


あまりにうるさいから、ラケットを受け取ると仁王に向けて当ててやった。


力の加減ももちろんだけど、ボタン押さなかったなんてオレ天才的に優しいー。


「次ヘンなもん押しつけたらこのボタン押してお前の事この蚊よけラケットでよけるからな!!」


「えっ!?」


「うちにも同じのあんだよ…弟達が欲しがったから」


「なんじゃー、それならブンちゃん家から持って来ればよかね」


「だからー、ヘンなもん持ち歩かせんな!それに、」





最後は恥ずかしくて小声になった言葉も聞き取ると、嬉しそうに笑った仁王に思いきり抱きしめられた。











しかし、この一部始終を見ていた幸村くんに、2人とも蚊よけラケットで追い出されるのはあと数秒後の話…。








おわり

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