私はテニスが好きです、そして…

――ブンちゃん、勝ったらご褒美期待しとるよ――


全国大会決勝。
仁王はシングルス2、第3試合に出る。
シングルス3の真田、ダブルス2の柳と赤也が勝てば、残すは1勝。
仁王が勝てばオレ達立海はそこで全国3連覇だ。
この試合に掛かるプレッシャーは相当だと思う。






「参謀達が負けるわけはないが…俺もそろそろコートに戻るナリ。…ブンちゃん、行ってらっしゃいのチュー…」


「バカか、お前は!」

……のに、アップ中のこいつはかなり余裕綽々。
仁王が負けるとは思わないけど、その次の自分達の試合を気にした方が良さそうだ。


「ブン太、冷たい…」


「…(はぁー。)…絶対、勝てよ。ご褒美考えとくから」


「ん。雅治がんばるぜよ!」


「…キモいから、それ」


「……」





仁王の試合が始まった。
相手は不二周助。

『おまんは勝たさんぜよ』

差し出された手の平に本物はないと思え――


『メテオドライブ!』



よし、仁王が攻めてる!
って、あいつ…。


『しょせん、2番手のお前、手塚国光は越えられない』

『カウンターすべて返したバイブルに対抗する気か?』




「(…何だよ、あれ。手塚と白石にしか見えねぇ。…それに、あんな仁王知らない。あんな、相手を射ぬきそうな迫力…初めて見た。仁王ってすげーかっこいい、んだな。)…仁王、お前が優勝を決めろよ!」


『打てるもんなら打ってみんしゃい』


―――星花火


仁王の打球が打ち返された。


『…!何さらしとんじゃ、…返せんぜよ…』


不二のカウンターは、仁王の後ろで跳ね、客席にまで飛び、仁王は動く事さえ出来なかった…。


―――君は手塚の足元にも及ばない






「所詮ピエ「ブンちゃーん!!…不二は怖かったぜよ。俺頑張ったのにあんな…やっぱり不二は腹ぐ」「次オレら試合だから!抱きつくな早く離れろ!」……」


「…じゃあ俺がパワー分けちゃるからチュ「いらないから!」…」


仁王を引き剥がすとジャッカルと共にコートに立つ。


「ブンちゃん酷い!」


…つーか、あいつ落ち込んでねーのかよ、試合負けたってのに。


「あ、仁王先輩逃げた!」


「仁王のやつ、余程殴られたくないと見える」






試合の後、レギュラーは学校に戻り、他の部員は現地で各自解散となった。


「……」


「準優勝、か…幸村くんも負けたとか信じらんねぇ…」


学校まで戻る間、みんな無口だった。
赤也に至っては、すげー不細工な泣きっ面晒してたけど。


「…俺の敗因は、ブン太が行ってらっしゃいのチューしてくれんから、カロリー不足ぜよ。ブン太もパワー分けちゃるって言ったのに断るし」


「…関係ないから。つか試合になんねぇから」


「…ご褒美の代わりに、慰めてくれるんじゃろ?」


帰りの間ずっと黙り込んで落ち込んでるのかと思ってたら、何考えてたんだ、この詐欺師。

だけど―――

「………オレらも勝てなかったしなぁ……仁王、オレの事も、…慰めて?」

試合中、普段見せない表情にときめいたのは本当。


「もちろん」


そう言うと仁王は、オレの手を取り走りだした。








おっまえ、何がカロリー不足だよ!…試合中、手ぇ抜いてっ、たんじゃねぇ?


…そんな事言うなら、こうしちゃるぜよ!


ちょっ、待っ、…におっ!





充電完了☆ナリ
…ムカつく!




おわり

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