トップですから





※ちょっと幸赤
何か、色々ごめんなさい…










「わー、カワイイっスね、2人とも」

「だろぃ?さすがオレの弟♪」



先輩みたいに凶暴じゃないし…とは言えないので、とりあえず笑っておく。





部活後に着替えていると、
「赤也、イイもの見せてやるよ!」
と言われ、丸井先輩が自分の携帯を差し出してきた。



「…何スか?」
と受け取るものの、先輩はニヤニヤ笑いながら見るように促すだけ。



前にも同じように渡された時は、下着姿のお姉さん達が大勢でキャッキャッしてる映像で、流行りの曲に疎い俺はそれがPVだなんて知らなくて気付いたらガン見してて、笑われるし怒られるしで散々だった。
仕方なくね?中学生だし。
…先輩らもそうなんだけど。

だから今回は警戒しながら渡された携帯の画面を見ると、どうやらまた動画みたいだ。
恐る恐る再生すると、先輩の弟2人が片腕を上げ、脇に手を添えながら腰をクネクネさせて回り始めた。

そして冒頭に至る。



「やっぱ小さい子って、こーゆーのマネしたがるんスねー」



そう、これは某お笑いタレントの持ちネタ。



「な、すげー可愛いだろ?」


丸井先輩の弟への溺愛振りは知っていたけど、これまでとは…。



「先輩は一緒にやらないんスか?」

「えっ?オレ?…やるわけねぇじゃん!」

「ふーん…」



先輩ノリいいし、一緒にやってそうなのに、と思いつつ、『ラブちゅうにゅ〜』と2人が愛らしくポーズを決めて再生の終わった携帯を閉じる。





「〜っ…ちゃ…だょ」



――――ん?



だけど、携帯を返そうとした時に何やら声が聞こえた。

ふと、まだ手元に握っていた先輩の携帯を開くとそこには、さっき弟達がやっていたのと同じポーズで回っている丸井先輩が映っていた。
うっかり次の動画へ押してしまったらしい。

撮っているのは弟くんのようで、ところどころ指が映り混んでいる。

それに笑い声も録音されていて楽しそうだ。



「また見てんのかよ?」

返そうとした携帯を再び見だした俺を不思議に思った先輩が画面を覗きこんだ。



『LOVE注入〜』

映っていたのは両手でハートを作って首を傾げる自分の姿…。


「……っ!」


『兄ちゃん、あれもやって!』


『わーかったって、空こ…』



「〜っぁ!お前っ!何勝手に再生してんだよっ!!」

俺の頭をバシバシ叩きながら顔を赤くして携帯を奪い取る丸井先輩。


「いって!ワザとじゃないっスよっ!」


「…さっきから何騒いどるんじゃ」


そう言って、赤也から奪い返した携帯を後ろから覗いたのは仁王。

自分でも、更に顔が赤くなったのがわかる。


「……ふーん」

「…に、ぉ…」

「ブンちゃん、いつもはヤダヤダって俺のお願い聞いてくれんのにね」


後ろから覗けるとか背高いだろ?って感じがやっぱむかつく…と思ったのも一瞬、絶対からかってくると思った仁王のリアクションが予想外だったから、窺うように振り返れば冷たい表情で不機嫌オーラが溢れ出ていた。



「え…」

「弟には喜んで足開くんやね」

「はぁ?意味わかんねぇし!お前の時と状況が違うじゃん!」

「俺の時は出来ないしか言わんじゃろ、弟の前では出来てるぜよ」

「だ、だから!これ、は…服、着てる、し」

「服着てれば俺の前でも出来るん?」

「……っ!」

「…やっぱり出来ないん」

「……っ、ャだ、ってば」

「何で」

「におぅ、に見られてると、オレ……ほしくなっ、ちゃぅ…からっ…」


「何を?」と問えば顔を真っ赤にして「…バカ…」と俯いた恋人が愛しい。
俯いた顔を上向かせれば、瞳には涙が浮かんでいた。



苛めすぎた、と抱き寄せて唇を塞…



――――バシッ!



「…いった!何さらすんじゃっ…」


ブン太が瞳を閉じ、あと数mm、と言うところで後頭部に衝撃が。
振り向けばお怒り気味な我が部長…。


「ここが部室だって事忘れてないかな、仁王」

「…幸村」

「幸村くんっ…」

「どうでもいい痴話喧嘩は部活中禁止だから」

「部活終わったし、喧嘩はしとらんぜよ」

「…屁理屈言ってないで、ブン太泣かせた時点で、お前悪者だから」

「えー…」

「泣かせるのはベッドの中だけにしてくれないかな…わかったら早く帰ってよ、俺も赤也にラブ注入するんだから」

「ちょっ、部長っ!」
「っ、幸村くん?」



「今日はどこに行こうか、赤也」





幸村の爆弾発言に焦る赤也と赤面するブン太を余所に、笑顔で言い放った本人には誰も返事を出来なかった。

(我らが部長、恐るべし…!)






おわり


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