4月1日

「仁王、帰ろうぜー!…って、どうしたんだよ、何か深刻そうな顔してっけど」


部活の後、着替えを終えて声をかけると、ロッカーの前に座り込んだ仁王は珍しくうなだれていた。
しかもまだ着替えてないし。


「…ブンちゃん、俺本当は14じゃないんよ」


しかし、顔を上げた仁王からは予想外の言葉が返ってきた。


「…えっ?!」


「ずっと騙しててすまんかった…」


オレの反応を見た途端、また俯いてしまった仁王。


「…いや、いいよ、オレ、も、そんな気はしてたし」


予想外、だけど狙いは読めた――
が、戸惑ったように言葉を返す。


「ブン太…」


オレの返事に驚いたらしい仁王に更に続ける。


「その髪、いつまでも生え際まで真っ白だし、その猫背気味なとこも、すぐとぼけたふりしてたのも……全部年齢ばれないように誤魔化してたんだろ?」


隣にしゃがみこんで頭を撫でてやれば、一瞬くすぐったそうな顔をしたのが子供っぽい。


「…ブンちゃん?」


「それにお前、キスする時に、髭の剃り残しが時々ザリザリして痛かったんだよな…」


…なーんてウソだけど。


「ちょい、ブン太!」


オレが話に乗っかってる事に気付いたみたいだけど、止めてなんかやらない。


「今まで…知らないフリしててごめんな、仁王おじーちゃん…」


撫でる手を止めて、顔を覗き込み、とどめの一言。


「コラ、好き勝手言い過ぎじゃ、アホ!」


頭に置いていた手を下ろされた。


「あれ、ちげーの?」


「れっきとした平成生まれの中3ぜよ」


ちょっと拗ねた様子がおもしろくて、大袈裟に驚いてやった。


「はは、だよな!……けどさ、オレは、中3じゃないんだ…」


今度はオレが、掴まれていた手を離しながら視線を逸らして呟いた。


「あー、小学生か…」


なのにコイツときたら…。


「いや…オレ、毎日ガム噛んでんの、本当はタバコやめるためなんだ」


「…!」


「さすがにガキん時から吸ってたらすぐに背伸びなくなっちまったし、そろそろ肺もヤバイみたいで。そんなに口淋しいなら、って医者にガム奨められた」


こんなのにひっかかるとは思わないけど。


「……」


「………」


「……っ、…ぅ」


「……何か言えよ、って何泣いてんだよ!」


…調子乗りすぎた、オレ?!


「ブンちゃん、俺がこれから毎日ガム買ったるからどこにも行かんで…」


「うん?」


離した手を再び掴まれ、仁王の気迫に圧倒される。


「…あ!柳生んちの父ちゃんなら治せるかもしれん…それより柳生に早よ医者になってもらうか…いや、いくら診察でも柳生にブンちゃんの裸見せるんは…(ブツブツ…)」


「仁王?」


真顔で呟く仁王が気色悪い…つか、最後の方聞こえなかった事にしよう。


「…ブン太ぁ〜っ!俺が治してやれなくてゴメンな…」


とか思ってたら抱き付かれた。


「仁王………って、ウソだから!」


「痛っ!髪引っ張らんでよ…」


ちょっとドキッとしたけど、泣き顔が不細工だったから引き剥がしてタネ明かししてやる。


「今日エイプリルフールじゃん」


「そうやね…ブンちゃんも同い年?」


「当たり前だろー!つか、ウソ泣きかよ…。ったく、何なの、お前…」


全部わかってたような笑顔で尋ねてきた仁王にイラッとする。


「何って、ブン太の彼氏じゃろ。それに、コート上の…?」


「…ヘンタイだっけ?」


ここコートじゃねぇし。つか、さっきオレの裸がどうとか、やっぱ変態だよな…!


「……ブン「さてと、帰るか!仁王がガム買ってくれるって言ったし♪」


「はっ?」


仁王から離れ、ドアに向かう。


「確か新しい味の出たんだよなー」


「え?」


焦る仁王を気にせずに笑いながら続ける。


「毎日買うからどこにも行くなって言ったのお前じゃん」


「…ブン太のが俺より詐欺師ぜよ」


仁王の声は聞こえないフリをして、ドアの手前で立ち止まる――

「…………マジで口淋しい時はお前にチューしてもらうから!」

そして、仁王に振り向き笑顔で言い放つと部室を後にした。


「…っ!…ブン太には適わんね、まったく…」


ドアが閉まる直前に聞こえた言葉に、笑顔で走り出す。











ちょ、カゴいっぱいのこのお菓子は何やの!

だって仁王、全然来ねえんだもーん。それに1個とか決めらんないから、食いたいやつ全部入れた!

……もーん、とかまったく可愛くないぜよ

ふーん?ま、今日はそんなの気にならねぇもーん。

……

つーことで、あと肉まんもシクヨロ♪






おわり

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