プレゼントは…君希望。
※拍手のリップクリーム後日談
最近ブン太が構ってくれない。
今日も予定があるとかで会えないし…。
もしや早速、倦怠期ってやつか!?
…でも付き合い始めて1ヶ月足らずでそれはない、はず。
よし、淋しさを紛らわす為、今日はイリュージョンでブン太になってみるぜよ。
「お♪なかなか、いーんじゃね?」
部屋の姿見に映る自分を見て、自分の恋人は可愛い顔をしてるなぁと再認識する。
どお、天才的?…自分のイリュージョンに対して、恋人の決め台詞。うん、声のトーンもバッチシ。…って、ガム忘れてたナリ。
これなら赤也あたりを騙せるかもしれない―――
ちょっとイタズラをしたくなって、電話をしてみる。
呼び出し音の後、もしもし、と赤也の声。
「あ、赤也?」
「え?丸井先輩?」
思った通り、信じてる。
「お前さぁ、夕方暇?」
―――――――
「おう、じゃあ後で」
しばらく話し、赤也と会う約束をして、電話を切った。
だが約束をしたのはブン太本人ではないわけで。
俺は約束の時間、物陰から赤也を観察するだけ。
夕方が楽しみやの。
その後しばらく、ブンちゃんのまま、コスプレごっこをしてみた。
最初は普通に、立海の制服、そしてユニフォーム。
しかし、あまりに見慣れた格好の為、すぐに飽きた。
こっそり姉貴の府屋に入り、高校時代の制服を拝借。
…やはり、サイズが合わん。
ま、着てんのが男だしな…と、半ば諦めつつ姿見を一瞥―――これはヤバイだろう。
広い襟により、いつものワイシャツとは違う見え方をする鎖骨。
丈が合わずにチラリと見える脇腹。
そしてスカートも丈が短く思った以上に見えてしまう太股。
屈んだり、耳に髪を掻き上げてみたり、腕を伸ばして上に伸びてみたり。
自分が着ていても、ブン太の顔だと―――
あぁ、ブン太!
セーラー服が似合いすぎじゃ!!ブン太のチラリズムは犯罪的にエロすぎるぜよ…!
今度コスプレごっこさせよう!!
鏡に映るブン太の顔をした自分の姿に、思わずやましい感情が沸き上がる。
――ガチャッ。
「…あ!?…仁王、何してんだよ!!サイッテー!!つうか、きっっしょ!!」
え?!
ノックもなしに、勝手にドアが開かれたと振り返れば、ご本人登場??
「…どうしたんスか、丸井先輩?って、うっわ、仁王先輩、何してんスかっ?!」
赤也??
約束は、まだのハズだが?
場所もうちではないし。
つうか、バレてる?
―――――
「で、オレに成り済まして何してたんだ、テメーは?」
ブン太に殴られたので、イリュージョンを止めて正座中。
目の前のベッドには、ご立腹中のブン太と、どこか楽しそうな赤也が腰掛けている。
「…ブン太が、最近構ってくれんから、会いたくなって、つい…」
と、返すと「はあ?」とますますキレられた。
「お前が会いたいのは、あんな格好のオレなわけ?」
「ちゃうよ!あれは…ブンちゃんの可愛さに、魔が差したと言うか…(でも今度させようと思ったのは言わんでおこう…)。ところで、何で赤也と一緒にいるんじゃ?!」
さっきからブン太の隣でニタニタ笑ってる赤也に腹が立つ。
ペテンに引っ掛からなかった上に、ブン太と一緒にいるなんてムカつく以外の何でもない。
「ん?あぁ、オレ赤也が好きだから」
と、嫌味っぽく答える恋人に涙が出そうになる。
「……てのはウソで。もうすぐ、ホワイトデーだろ…バレンタイン、何もあげてないから、最近プレゼント選んでて、それ一緒に見てもらってた…お前をビックリさせたくて隠してたんだけど…」
なんて、顔を赤くし俯きながら告げられた、思ってもみなかった嬉しすぎる理由に結局涙がこぼれた。
「ブンちゃん、ありがと大好きじゃ!」と抱きつけば、「ばーか」と言いつつ、抱き返してくれた。
「それにしても、仁王先輩もアホっスよねー」
そんな光景に呆れながら、赤也が言う。
は?先輩に対して失礼な!
その前に、空気読んで、はよ帰れ!
そんな視線を向けると、携帯を取り出し、
「だって、あの電話ん時携帯に先輩の名前出ましたもん」
と、着信履歴の画面。
「ちょうど、丸井先輩んちにいた時だから、すぐペテンだってわかりましたけど」
「……ピヨッ」
「あー…ホント、抜けてるよな、こいつ」
「やっぱペテン利くのはコート上だけなんスね〜」
楽しそうな2人に淋しさを覚えた。
おわり
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