君と僕の熱中SHOW

「あっついのぅ…」

「…溶けるな」


照りつける日射しの下、テニス部は今日も朝から練習だ。

仁王の言葉に同意し汗を拭うブン太の表情は、とてもげんなりとしていた。


それは彼に限ったことではなく、みな連日の猛暑に口を開けば「暑い」しか言えないのだ。


「仁王はさーオレが溶けたらどうする?」


そして熱気に充てられたのか不思議なことを言い出した。


「…冷やす?」


「いや、もう溶けちゃって原形ないの。かき氷みたいに」


ユニフォームの裾をパタパタさせながらそんな事を尋ねてきた。
視線はつい、ちらりと見える腹部に向いてしまうのだが。


「ブンちゃんセクシー」


思わず脇腹を擦った手を叩かれた。


「…オレの腹見てねえでちゃんと答えろよ」


「……」


この質問に正答はあるのだろうか。


「溶けたかき氷凍らせても元には戻らんね」


「だな」


「でもブン太はブン太だから好きなことに変わりはないよ」


「…」


例えばイチゴ味のかき氷があって。
溶けてしまえば、あのシャリシャリした食感はなくなって、赤い色のついた甘い液体になる。
凍らせても氷になるだけでかき氷には戻らない。


それでもイチゴ味の氷には変わらないわけで。


「…仁王ってば暑さにやられたんじゃねえの〜」


真面目に答えろと言うから答えてみれば、暑さではなく顔の赤くなったブン太が茶化す。


「そうやね、ブン太がかき氷なんて言うからアイス食いたくなったわ」


「よっしゃ、帰りコンビニ寄ろう!」


さっきの質問なんか忘れたかのように笑うブン太。


いつだってクラクラしてるんだ、その笑顔に。







おわり

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