title | ナノ
恋に魔法は必要ですか?何故、とそれだけ聞かれたなら、私はただ一言「なんとなく」と答えるしかない。だって本当にそうだからだ。理由があるのなら私も教えて欲しいものだ。
「そんな訳で、特に理由はありません」
「……ありませんってオマエ」
「ていうか、遼からそんな疑問が飛び出すとは思わなかったよ」
「うっせー」
オマエはなんで俺と付き合おうと思ったんだよ、なんて。
そんなカワイイ疑問がこの男の口から聞けるなんて、明日は雨でも降るかもしれないね。
大体、そういう疑問って普通は女の子が聞くもんじゃないのかな。「貴方は私のどこを好きになったの?」なんて。私は頼まれてもそんなこと聞けない。聞く気もない。そんな質問は砂糖菓子みたいにふわふわきらきらした可愛い女の子が聞いてこそ効果があるものであって、私みたいにコーヒー片手に本を読むような女には似合わない。
「なんか、ねぇのかよ」
「何が?」
「何が、って、…だから、」
「遼と付き合おうと思った理由?」
「……お前って、会った時からリアクション薄かったよな…」
聞いた俺が馬鹿だったよ、と遼は頬杖をつき、そっぽを向いてしまった。なんだなんだ、もしかして構って欲しかったのか。
そう思ってニヤニヤ笑っていると、それに気づいた彼が額を小突いた。
「なんだよ」
「別に?可愛いなと思って」
「……てめぇ、」
そうだ。遼とは、初めて会った時から言いたいことを言い合っていた。それが楽しくて、心地よくて。きっと学生の頃にしたような、甘酸っぱい思いじゃない。一緒にいるだけでドキドキするような、明日でも今すぐにでも会いたいって思うような、そんな気持ちじゃない。抑え切れなくなるような……持て余してしまうような、風船みたいな恋じゃない。
でもね、いきなり膨らんで、かと思ったら萎んでしまうような軽い感情でもないんだよ。
「安心したからかなあ」
「は?」
「空間が心地いいっていうか?」
「…あ、そ」
そしてまた明後日の方向を向いてしまう。けど、分かってるんだよ。その仕種が、遼が照れた時のものだってことぐらい。
「まぁ、なんだ、その」
「ん?」
「…同じこと思ってて、安心した」
ほんと、素直じゃない私の彼氏。
それに付き合ってやれる物好きは私ぐらいしかいないって、気づいてよね。
「なんかあれだね、この雰囲気」
「あ?」
「夫婦みたいだよね」
「…………」
「あれ、照れた?」
「う…っるせえっつの!」
照れ隠しをしてるつもりでも、全く隠せてない耳の赤みが嬉しくて、面白くて、なんだか少し愛おしくて、声を出して笑った。
恋って、いきなり大きくなったり、小さくなったりすることもあるけど。魔法にかかったみたいに相手に落ちるんじゃなくて、ゆっくり育てる恋もあるんじゃないかと思うわけです。そうやってゆっくりゆっくり大きくしていけば、いつかは。
「愛されてるね、私」
「今頃気づいたのかよ、バカ」
2011.03.04
For 「ドヤ顔ダーリン!」様