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彼女がにやにやしながら俺の隣を歩いている。
片方の耳にはイヤホン。何を聞いているのか気になるけど聞かない。聞いたら負けな気がする。

隣を歩く彼女と俺の手は繋がれていない。世間一般的に、男女が並んで歩いているといえばカップルに見られることが多い。そしてそれは現に、俺らも例外ではない。

冬なのに、いや冬だからこそなのか。彼女の手はポケットに突っ込まれていて、防寒具はマフラーとイヤーマフと、靴下。スカートは清々しいほど太股が見えている。もう少しでパンツが見えそうだ。そういえば最近ヤってねぇなあ。

彼女は相変わらずにやにやしている。何がそんなに楽しいのか。曲が楽しいのか?

「……遼くんや」
「あ?」
「そんなに見つめられたら僕チン恥ずかちぃ」
「あ、悪ぃ」
「いいえぇ。何?ファファ気になる?なっちゃう?可愛いでしょーあげないよー」
「いらねぇよ」
「フン、相変わらずのツンデレだね遼くん」

いい、と鼻にシワを寄せて彼女は歯を見せて笑った。それよりも俺は、どうしたらポケットに突っ込まれた手と繋げるか考えている。いや、これは難しいぞ。難しい。稀にみる難題だ。

「……あ、遼くんちょっとこのPV見てくれないか」
「あ?……誰だこれミラーズ?」
「ミ・イ・ラ・ズ!マジふぁっきゅー、このPV1番好き」

にやにや、にやにや。
さっきからにやにやしてたのはこれか。イヤホンを片方押し付けられるように、右耳に入れられた。地味に痛い。流れてきた音楽と一緒にPVを見る。…………何だこいつら。

「冷て!」
「……そりゃあ、まあ」

ずっとぶらぶらさせてたしなあ。握られた手を見て呟いてみる。全くこのヘタレめ、いやヘタレじゃないかシャイボーイか。うは、ウケる。そう言って笑った彼女が眩しい。

「つかこれはいいのか」
「ああ、これ?いいんじゃね塁くんだし」
「…………ふうん」
「何?ヤりたくなった?ご無沙汰だもんねぇ最近」
「マジお前死んでくんねぇかな」

そして出来れば恋人繋ぎがよかった。



(恋人つなぎを所望します)

企画サイトドヤ顔ダーリン!様に提出させていただきました!

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