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やってきました乙女のための乙女のイベント!チョコレート会社の陰謀なんて言ってる奴らも居るけど、きっと渡す相手がいないのね。なんて悲しい人達!私はもちろん愛しのダーリンのために(愛を込めて手作りバレンタイン!)なんてやっぱり陰謀に乗せられてる気もするけど、この際そんな事どうでもいいんですよ。すべては愛しのダーリンのため!

チョコを大量に買うとスーパーのお姉さんがバレンタインレシピ、と書かれた一枚の紙をくれた。(誰にでも簡単に出来るトリュフ)が作れるらしい。とりあえずチョコを買っただけで、何を作るかまだ決めてなかったからこれはナイスタイミング。君に決めた!

「まずはチョコを細かく刻む、と」
「生クリームは暖めるのか…なるほど」

材料もチョコと生クリームだけで、(誰にでも簡単に出来る)という言葉の通り私でも簡単に作れることが出来た。あとは、冷やしたチョコを丸め、湯煎したチョコでコーティングして、ココアをふりかけて完成、なのだが…肝心な事に今更気付いてしまった。あぁ、私とした事が!ココアがないじゃないか!

「別にココアじゃなくても…いいよね」

そうだそうだ!他の何かでも代替出来るはず。大体、黒いチョコに黒いココアじゃ見た目が淋しいなと思ってたところなのよ!そこで目についたのがグラニュー糖。黒×白でいいじゃない。君に決めた!あとは綺麗にラッピングして、愛しのダーリンに渡すのみ!あぁ、早く明日にならないかな。



そして今日は2月14日!
お待ちかねの乙女のイベント、バレンタインがやってきましたよ。


愛しのダーリンこと赤崎くんとは、練習が終わった後に会うことになってる。身だしなみも気合入れて、髪はコテでくるっくるに巻き、(少しやけどした…)ばっちり化粧を済ませ、丈の短いお気に入りのワンピースをチョイスした。(寒いけどね!普通に寒いけどね!)

「バレンタインデー・キッス!バレンタインデー・キッス!」

とっておきは私の唇、なんちゃって、うふ。待ち合わせ時間までまだ少しあったので名曲を口ずさみながら物思いに耽っていた。(人はそれを妄想と呼ぶんだろうけど)ベッタベタに、チョコの感想を聞いた私に赤崎くんがキスで答えるみたいな展開になったらどうしよう!ベタだけど良い!そしていつものドヤ顔でこう言うの、(チョコもいいけど、お前が欲しい)ってね!

「甘ぁぁぁいっ!あ、これ古いな…って赤崎さぁぁぁん!?」
「いえ、人違いです」
「ま、待って!待って!」
「相変わらず気持ち悪いな、お前」
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてねぇよ」

いつの間にか来ていた赤崎くんに恥ずかしいところを見られてしまった。不覚すぎる…。でも、そんなことじゃへこたれません!さぁ、気を取り直して本題に…、

「ほら、寒いから行くぞ」
「え?何処に?」
「は?俺ん家で映画見るって言ったのお前だろ」
「あ、そっか!そうでした」

そういえば、今日は映画を見るという口実で約束を取り付けたのだった。完全に忘れてたよ…。すたすたと歩き出す赤崎くんに置いていかれない様に駆け寄る。ポケットに手を突っ込んでいる赤崎くんの服を軽く掴んだら、手を繋いでくれた。嬉しくて思わずにやにやしてたら頭を小突かれたけど、照れ隠しだってわかってるから逆効果だよ、赤崎くん。



「はぁ、あったかあったか」

赤崎くんも私も寒いのは苦手な方なので、帰ったらすぐに暖房のスイッチを押した。あー、あったかいところはいいなぁ、快適すぎる。でもすごく大事な事を忘れてる気がするんだけど、なんだろ…あ、

「うわああああ!」
「!? うるせぇよ!」
「忘れてた、これ!」
「は?」
「ハッピーバレンタイン!」

この温度の中2時間も映画なんか見てたら完全に溶けてしまう。危ないところだった…セーフセーフ!もう少し良い雰囲気の時に渡したかったんだけど仕方ないね。これから良い雰囲気になるからいいの!

「…あぁ、どうも」
「ささ、赤崎くん。食べて食べて」

いつもの様にそっけなく私の作ったチョコを受け取った赤崎くんは、ラッピングを綺麗に解いて(几帳面だなぁ)一つ掴んで口に入れた。わくわくしながらその様子を見ていると赤崎くんは眉間に皺を寄せて口元を手で覆った。え…お、美味しくなかったかな?でもレシピ通り作ったしな。もしかして美味しすぎて感動…はないですよね。

「お、美味しくなかったでしょうか…?」
「甘い。甘すぎるだろこれ」
「やっぱりココアの代わりにグラニュー糖はまずかったか…」
「…道理で」
「うぅ、ごめんなさい…」

やっぱりあの時ココア買ってくるべきだった。折角のバレンタインデーが台無しだよ…。もう、私の馬鹿!

「まぁ、でも」

しょぼん、と落ち込んでしまった私を尻目に赤崎くんは、愛の篭った…改め、甘すぎるチョコを口に放り込んだ。む、無理して食べなくてもいいのに…!不安そうに見つめる私を赤崎くんは見下ろして、口角を片方だけあげ不敵に笑った。こ、このドヤ顔は何か悪い事を企んでる時のドヤ顔だ…!反射的に身構える私の腰をぐい、と引き寄せそのまま大胆にも深く口付けられた。ふ、不意打ちだよ赤崎くん!あぁ、確実に顔赤い…!でも嬉しい!

「こうすれば少しはマシになるんじゃねぇの」
「あ、赤崎くんベタすぎる」
「あっそ。じゃあもうやらねぇ」
「! や、やだ!もっかい!」


アテンション!甘過ぎる恋
(来年はチョコプレイしようよ赤崎くん)
(却下)



素敵企画
ドヤ顔ダーリン!に提出させていただきました!

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