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ここは、ルノアール王国の中心であり、ルノアール城の下町ルノア。
ルノアール王国1の商業都市であり、政〈マツリゴト〉の中心であるため、職人・商人・貴族…様々な階級の者が暮らしている。
とはいっても、ここにある貴族の屋敷は言わば別宅。各自の本宅は領地にあり、夫人や子供達は領地に住まわすことが多いのだが。
理由を簡単に言えば、治安が余りよいとは言えないから。
王立騎士団《ルノアール隊》や、ギルドの治安維持部隊《カゲロウ》の活躍により治安は良くなってはいる。
だが、それは表だけであり、裏まで手がまわらないのが現状である。
そんな時、事件は起こった。
男爵の位を授かったばかりの成り上がり貴族、ハルト公が殺害されたのだ。しかも、厳重に警備されたハズの自宅の書斎にて。
心臓を全長1メートルはあろう、灰色の十字架により串刺しにされ、遺体は恐怖で強張ったままだった。
目撃者はハルト公の秘書であり執事のロバート氏のみ。
目撃者の話によりと、悲鳴が聞こえた為駆けつけると、ハルト公は十字架により串刺しにされる瞬間で、串刺しにした犯人は灰色の二人組。「お前は死を以て罪を償え」と言い残し『消えた』とのこと。
仮にも貴族であるハルト公を殺害した犯人を捕まえるべく『ルノアール隊』が動いたが、手がかりすら掴めなかった。
その丁度ひと月後、全く同じ状況で遺体は発見された。ただし2体。
被害者は伯爵を承り5年のまだまだ新興の貴族家の主、ラルト公とその右腕の男ルフレ。
二家目の貴族が殺害されたのだからもう、多くの貴族は次は自分ではないか?と、警備の者を増やしたり騒ぎが治まるまで領地に帰ろうと動いたりと、騒然となっていた。
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