***

“人生とは短い。だが、それでも人は退屈する。” ――書庫にあった本に書かれていた、たった2文に僕は強烈に惹かれたんだよ。
そうだ、その通りだ。現にたった15年しか生きていない僕が、日々に退屈を感じているのだから。
お節介な母親。脳味噌の足らない使用人。威張り散らして中身のない言葉を吐く愚図の父親。
見ているだけも退屈で、面白みがなくて、欠伸が出る。なぁ、お前はどうだ? こんな家、退屈じゃないのか?
僕はとても耐えられそうにないよ。だから外へ行こうと思うんだ。何、ちょっと刺激を求めにいくだけだ。別にこの家を捨てる訳じゃない。
帰ってくるのはいつか? そうだな、この家の汚泥が綺麗さっぱり洗い流された頃にでも帰ってくるさ。

***

君の誕生日を祝う為に急いで帰路を走った。たくさんのプレゼントを腕に抱えて、あぁ君はもう寝ちゃったかな、なんてちょっと心配しながら。
12時になったら一番に君におめでとうと、僕を君の誕生日に捕まえてくれてありがとうと言うつもりだから、早く帰って準備しなくちゃ。
君のためならなんだってするよ。君は僕の大切なパートナーだから。
家の扉を開けて、君の待つ部屋へと。
おかえりって、いつもみたいに優しい声で言ってよ。
あれ? どうしたの、寝ちゃってるのかな。
横にいる男はいったい誰なの。どうして、君に包丁を突き立ててるの。
部屋がぐちゃぐちゃなのはどうしてなの。
僕と君との思い出が、どうしてぐちゃぐちゃになっているの。
今日は君の誕生日だよね。ねぇ、おめでとう。おめでとう。
こたえてよ。

***

軋んだレコードの音が鼓膜を撫でていく。今日もアタシのコレクションは美しい。関節の滑らかさを堪能しながら紅茶を飲むのは日課なの。
皆がアタシをおかしいというけれど、好きなものを好きといって何が悪いのかしら。あなたたちだって、好きなものを否定されれば真っ赤になって怒るくせにね。
今日は一体どの子をにしようかしら。綺麗にしてあげる前のコレクションを仕舞い込んだ部屋へ入る。むせ返るような薔薇の香り。あぁ、これはもう駄目ね。
外ではガンガンと何かを叩く音が聞こえる。もしかしてもう時間なのかしら。残念だわ、せめてあと一人くらい、お人形にしてあげたかったのだけど。

***


  back


AS軍のとある3人の小話

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -