フェアシュプレッヒェン

「なんでなんですかッ!!!!」

さざ波の中にテレンスの甲高い声がこだました。
無意識にアトゥムにも力が加わったららしく、承太郎の顔が苦痛に歪む。
ジョセフが臨戦態勢に入ったと同時、ホル・ホースも後ろ手にメギャンした。

「急に消えて、急に現れたと思ったら、勝敗さえ気にかけていない!?こっちは貴方のために必死で...それなのに!!おかしいでしょう!!貴方は一体のこのこと何をしに此処に来たんだ!!!」

しまった。涙目でヒステリックにがなり立てるテレンスを目の前に、地雷を踏んだことを理解する。
結果が見えている故におざなりにした観戦だったが、それが仇となった。ああもう俺の馬鹿。

手を上げてスタンドを浮かせた連中を制して、一歩一歩と、拳を握り締めて鼻息を荒げるテレンスに近付く。

「テレンス」

震えるその腕を引いてそのまま抱き込めば、耳元で嗚咽が溢れた。

「ぐっ、ぅうううう」

泣き崩れるテレンスを抱き締めて、その背中を優しくさすってやる。数年前となんら変わらない。可愛い、俺のテレンス。こうなったらもう収集がつかないのは分かっていた。

ブレにブレたテレンスの精神ではスタンドを維持することも出来なかったらしく、アトゥムの力は既に消えている。
頷いて、先に行く事を彼らに促せば、彼らは壁を貫いて駆けて行った。

「カイリ、カイリ...ッ」

「うん」

「もう、何処にも行かないでくださいッ...」

「うん」

「置いて、行かないで くだ、さい」

「うん。何処にも行かないし、置いていかない」

「約束、しろ」

「約束するよ」

もし破ったら、その時は人形にしてテレンスの傍に置いておいてくれたらいい。
そう言えば、テレンスはさらに泣き出してしまった。

「なァ、水差して悪いんだがよ。このままここにいて大丈夫なのかァ?」

「ああ、そうっすね。すいません、移動しましょう」

「...移動?」

ドォン

館が大きく震動した。
ヴァニラアイス...。

「DIO、様」

テレンスも察したらしく、その目が見開かれる。

「テレンス、俺ね。お前のこと連れ戻しに来たの」

なあ、テレンス。DIOと俺、どっちを取る?










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -