フレーズグラース

助けてくれた礼にと、ダニエルさんの宿泊先のフロント前のレストランで俺は高そうな飯をご馳走してくれた。
メニューは英語で書かれていたので文字は読めたのだが、どれがどんな料理か分からなかったため、結局ダニエルさんと同じのにしてもらった。

「ところで君はどうしてあそこに?」

ダニエルさんの目を見て、誤魔化しは利かないと感じた。
敵意こそ孕んではないが、怪しんでいるのは確かだろう。

「弟さんを助けに」

ダニエルさんの目が見開かれる。

「負けますよ。あいつも、その主人も。奴等に」

なんなら賭けても、と殊勝に笑えば、更に彼は瞠目した。
まあ、そりゃ驚きますよね。
俺、どう見ても普通の真人間だし、まさかこの案件に絡んでるとは誰も思わないだろう。

「君はどこまで...」

「...さあ?」

どこまで知っているかは曖昧に誤魔化す。
もしかしたら周囲の人間にDIOの手下がいるかも知れない。危ない橋は渡らない方がいい。
周囲を意識している事を目で合図すると、ダニエルさんは黙って頷いた。

「しかし君が何をしようとしているかは知らないが、はっきり言って無謀だぞ」

「それでも俺はやらなきゃならない。大丈夫、俺にだって策くらいありますよ」
「勝機はあるのか?」

「目的はテレンスの救出ですからね。奴等に戦いを挑むわけじゃないっすから、それなりに」

まあ承太郎達敵に回さなくても、怖いのは二人もいるけどね!
正直DIOよりヴァニラがヤバイ。鉢合わせでもしたらその瞬間に終わる。全てが。

運ばれてきた海鮮パスタが目の前に出される。うわあうまそう。つか高そう。流石、ダニエルさん。伊達にイカサマギャンブラーやってない。

「まあ賭けっすよ。賭け」

くるくると綿をフォークに絡めて、口へと運ぶ。
ほわっと海の幸の豊かな塩の匂いが鼻を掠めた。

「賭け、か」

「賭けです」

ベットしてくれます? と笑いかければ、ダニエルは漸く笑みを見せた。

「アイツも20を過ぎた。もう自分の事は自己責任でいいだろうと思っていたが、他ならぬ君の頼みだ。借りも出来てしまったしね」

「ありがとうございます。まあダニエルさんにそんな危険な事はさせませんよ。何かあったら我先に逃げて下さって結構ですし」

そう言えば、ダニエルさんは、そうさせて貰うよと眉を下げて笑った。

まさかダニエルさんが協力してくるとは思っていなかった。ものは試しに言ってみるものである。

あ、あそこの席の苺のジェラート美味しそう。
試しにねだったらあれも買ってくれっかなダニエルさん。なんつって。











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