memo simple is the best! ::塵紙(独歩/hpmi)※ ※男主、汚い、本番ないけど下注意 俺には誰にもバレてはいけない、馬鹿みてえな秘密がある。 17時。定時を告げるチャイムが社内に響くと同時、定時で上がるように言われている新人が席を立ったかと思えば、ゴミ袋を片手に戻ってくる。当社では入社一年目は帰る直前にフロアのゴミを集めるシキタリなのだ。 新人の名は観音坂独歩といった。陰気な奴で、新入社員に求められるような明るさもなく、いつもたじたじしているし、口うるさいことで有名な課長にも早速目をつけられている。隣の部署でフロアが同じ、ということが接点の俺は、奴のことをこれぐらいしか知りはしない。 新人君が緩慢な動きで各デスクのゴミを集めているのを傍目に、踵を揺らす。 逆さまにされたゴミ箱から落下していく塵紙のポサポサとした音が、俺の鼓膜を小気味良く震わせる。 俺の正面のデスクのゴミ箱を新人が回収し終えた。いつもの手順なら次は俺のデスクに回ってくる番だ。 期待通り、新人君もとい独歩くんが目の前に立つ。陰鬱な面持ちで会釈をしてくる彼に、俺はいかにも今気づきましたという装いで頷き、椅子を後ろにスライドさせると、“ゴミ“でいっぱいのボックスをよこした。 無言でそれを受け取った奴がさっきと同じ要領で袋に移していくその様を怪しまれないよう、視界の端でじっとりと見守る。 「いつもありがとね」と自然な振る舞いで声をかければ、独歩君の肩がびくりと震える。その拍子で丸められた塵紙がいくつかとりこぼれた。「あ、はい……すみません、っ」なんて慌てた調子で急いで落としたゴミを拾い上げると、俺にボックスを返して会釈をし、足早に奴は次の回収へと移っていく。 立ち去っていくその背中をもう一度盗み見て、すぐさまPC画面上のエクセルへと目線を戻す。心なしか熱くなった股関をぐっと組み合わせた脚で押さえ込むと、ゆっくり安堵とも興奮の余韻とも言えない溜め息をついた。 俺の誰にも言えない、馬鹿みてえな最低な秘密がこれだ。 自分のゴミ箱に職務上決して発生しないだろう混ぜものをして、新人に回収させている。 混ぜものというのは俺は昼休憩にオナッて丸めたティッシュ。それをゴミ箱に混ぜ込みあの幸薄そうな新人に処分させることに、この上ない背徳感と興奮を覚えている。 魔が差してこの行為をはじめて早三ヶ月、俺はすっかりこの感覚が癖になっていた。 「お疲れ様です、お先に失礼します……」 独歩くんのたどたどしいお疲れ様に、儀礼的にフロアの者がお疲れ様を返す。 ……抜きに行こ。彼が出ていったのを見計らい、ゆっくり椅子から立ち上がる。 「◯◯くん、どこ行く?悪いけどちょっと頼まれてくれない?」 事務のお姉さんにひき止められ振り返ると、その手には七階受付の書類。 「あ、いっすよ、ついでに持っていきます」 「助かる!ありがと!」 へーい。書類を受け取って一個上の階へと続く階段を登る。先抜いてから出しちまおうと、トイレを探すが見当たらない。あー、七階って確かトイレが他のフロアと違って奥にあったんだっけか。 あまり用事がなく来ない階なので、忘れていた。 案の定奥に隠れるようにトイレは存在していた。他のフロアよりもボロめで小汚ないけれど、まあいいだろう。 誰も来ないだろうと空き表示になっている多目的トイレのドアを開ければ、便器の上で大股かっぴらいてオナッている観音坂と目があった。 「は?」 「……え?」 扉がばたんと背で音を立てて閉まる。 悪い、と即座に外に出ればよかったにちがいないだろうが、会社のトイレで足開いてケツ穴オナニーしている新入社員に出くわせば、半分の人間は固まる気がする。 「え、ぁ……?」 そこではたと、観音坂が自身の鼻のあたりに何かを押し当てるようにして握っていることに気付いた。 塵紙? 独歩の足元には先程集められたゴミの袋。 「あっ……!待って、やめてくださ……!」 半ば引ったくるように塵紙を奪い開いてみると、予想通りカピカピになった精液がこびりついていた。こんなゴミの発生源と言えば俺ぐらいだ。 信じられない。目をかっぴらいて観音坂を見る。 「あーあ、バレちゃいましたね……」 たはは、と苦笑して頬を掻く観音坂に、今度は此方が狼狽える番だった。 「何、して……」 「それは……その、先輩の方がよくお分かりかと……」 分からない。分かるわけがない。誰にもしられちゃいけない、馬鹿みたいな秘密。それが、当人に知られていた上に、まさか、こんな。 動揺している俺を尻目に、観音坂は着衣を整えている。 「あの、すみません それじゃあ俺、帰りますね……」 また、週明けよろしくお願いします。 俺の真横を通り抜け様に呟いて、ご丁寧に頭を下げて去っていく観音坂。 俺は呆気にとられたまま、その場に立ち尽くすしかない。 床に散らばったまま放置された塵紙が、てらてらと光っていた。 back ×
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