<バイオレンスシカマルと秋の味覚>
食欲の秋ですよー!
そう言って何やらデカイ弁当箱を持って暗部の待機室に現れたあいつの表情は晴れ晴れとしていて、多分、いや絶対あの弁当の中身は力作の中の力作なんだろうと判断した。そう思ったと同時に腹がぎゅる、と音を立てた。勿論俺ではない。あいつの腹が鳴った。
「…」
「…」
「あ、あれ?佳鹿くんだけ?蒼も日和ちゃんもいないの?」
めちゃめちゃ挙動不審に辺りを見回しながら、腹の音が鳴ったのを無かったことにしたあいつが他二人の姿を探した。タイミング悪く、今さっき二人は其々任務に出掛けてしまった。そう教えると、あからさまにガッカリした顔で項垂れた様子に思わず笑うと、ムッとされた。
「いいよ、そこに置けって。俺はまだメシ食ってねーから」
「…!」
「それに、腹の怪物がいつ暴れ出すかわかんねーからな」
「ななな何の事かな!?あ、お茶!お茶も要るよね!私お茶淹れてくる!」
ダダダ、と慌ただしく去って行ったあいつを見送ると、待機していた部下連中が弁当箱を見て告げた。
「…キッチリ四人分すね」
「おー、食いたけりゃ殴り合いであと二人の枠決めろよ」
俺の一言を皮切りに、ウォオオ!と野郎どもの汗臭い攻防戦が始まったのは言うまでもない。
(え、なんか顔が傷だらけだけど大丈夫ですか?)
(ハイ大丈夫です!美味しいです!)
(やったありがとう!これも食べて!)
(副隊長!俺すごい幸せです!)
(そうかそうか、そのハチの巣みてーな顔どうにかしとけよ)
この日から暗部待機室にちょこちょこと手作りの差し入れが置かれ始め、その度に数人の暗部達に生傷が出来始めたのはまた別の話