題:りんご汁 「あんたそればっかだな」 わたしは痛む頬をさすりながら、般若のような顔をした南雲を見つめた。 南雲は、わたしに渾身の一撃を食らわしたときのフォームのままだった。鋭い手の平の指先が、天井を向いている。 「セックスセックスセックスって、それしか言えねえのか、アホか、とんだ人間様だな、たまにはもっと情緒あること言ってみやがれ」 わたしは溜息をついた。 「つまり今日はダメなんだな、ノーなんだな、致し方ない、明日だったら良いのか?」 「いまオレが言ったこと聞いてたか?」 自分の胸によく聞いてみやがれ、ああ、南雲が行ってしまう。 「待ってくれ南雲、最後にひとつ、聞かせてくれ」 「んだよ、内容によっちゃ殺す」 「キミは、こんなわたしのことは嫌いか?」 南雲は押し黙った。 そして再び、自分の胸に聞いてみやがれ、と言う。悔しくて堪らないという顔をしている。 可愛い、可愛いよ南雲。 |