「やあガゼル」

「なんだグランか。うるさい、わたしはいま忙しいんだ、話し掛けるな」

「ねえ、聞いてよ、さっきバーンに八つ当たりされちゃってさ」

「……八つ当たり?」

「うん、八つ当たり。彼最近、君のことで相当キてるみたいだよ?」

「はん。昨日はいつもより酷くしてやったからな、体の具合でも悪いんだろう。わたしには関係無いが」

「ほんとうに酷いなあ。酷い男だなあ君は。付き合っているわけじゃあないの?」

「誰があんな単細胞の恋人になどなるものか…」

「ふうん、好きでもなんでもないってこと」

「単なる性欲処理の為の道具だ」

「アハハ、サイテー」

「何とでも言え」

「道具って言うんならさ、バーンばっかり使うのはよしなよ。靴でもペンでも、同じものばかり使うと擦り切れちゃうでしょう?早く悪くなっちゃうでしょう?他にも居るじゃない、ドロルとかネッパーとか」

「………却下だ」

「なぜ?正しいのに」

「あれは、あの威勢の割に小さくて力も弱い。良いようにするには調度良い」

「へえ?じゃあ俺のところのネロなんてどう?勝ち気で、ちっちゃくて、お目がねにかなうと思うけど…」

「貴様のチームの者など論外だ」

「なかなか良い具合だと思うんだけどなあ。バーンはどう?良い感じ?」

「ふん、あれは、ちょっとばかり使ってやったらすぐにいやらしくくわえ込むようになったな。それに、紅蓮の炎だのなんだの、豪気なことばかりほざくくせに、なんだあの病的に白い肌は。傷付け甲斐はあるが、最近じゃ少し痛くしてやった方が善がるだなんて、とんだ変態だよ。しまいには出さずにイけるようにまでなって、ああ、昨日もそうだった、本当にばかみたいによく鳴く…」

「ふーん。取り替える気はないんだ」

「道具にするならあのぐらい粗悪なので十分だろう」

「へえ、じゃあ、それ俺にも貸してよ」

「なに?」

「だからさ。俺も、性欲処理にバーン使いたいから貸してよ。どうせ粗悪なんでしょ、なら良いじゃない、減るもんでもなし…ふふ、そんなこわい顔しないでよ。俺は、シャーペン貸してって言ってるようなものじゃないか」

「…貴様には、シャープペン一本貸してやる気すら起こらない」

「あ、そう。それならもとからダメだね」

「言うまでもない」

「交渉決裂だ」

「いまのを、交渉と言うのならな」

「ならもう盗むしかないよねえ、俺あんまりお金も無いもの」

「黙れ、バーンはわたしの物だ」

「わあっ、恥ずかしいせりふ」

「貴様にだけは、わたしの所有物のひとつたりとも渡しやしない」

「じゃあその下らないプライドごと全部かっさらってやる」

「上等だ、やれるものならやってみろ」

「ふふ、愚痴聞いてくれてありがとう」

「なに、礼には及ばない」