・風丸と宮坂




















そして、





「風丸さん」


校庭の隅っこのベンチでうなだれていた俺の足元は、気が付けば、色とりどりの花々で埋め尽くされていた。

びっくりして顔を上げると、そこには、なぜか息を切らした宮坂が居る。彼の手には、俺の足元にあるよりももっともっとたくさんの花が抱えられていた。赤、黄色、ピンク、紫…花の種類も形も大きさもばらばらだった。見覚えのある花たち。宮坂の小さな手にある無数の花には根っこなどついておらず、皆茎のところでちぎられていた。

はらはら、彼の腕から俺の足元へと零れ落ちていく。それが美しいので、なんだか俺は夢を見ているようだった。


「宮坂…それは…」

「かっ、風丸さんがなんだか元気なかったので、つい」


つい、って。

ふいと遠くの景色に目をやると、校庭脇の花壇が目に入る。あら不思議、今朝まではカラフルな花々を湛えていた花壇が、丸裸のまっ茶色ではございませんか。


「ねえっ、風丸さん、元気出してくださいよ!このお花ぜんぶあげます、あとなにか欲しい物ありますか?風丸さんにならなんでもあげます。それとも、だれか会いたい人がいますか、それともそれとも、だれかいなくなって欲しい人がいますか、なんならボクが」











「んむっ」


俺は、宮坂の口を人差し指でちょんと塞いだ。


「ありがとうな」


宮坂は心底幸せそうに、えへへっと罪の無い笑顔を見せた。その拍子に、抱えていたたくさんの花がふわふわっと散る。

揺れる金髪には、花を盗んだ時につけたのであろう、パステルカラーの花びらがあちこち付いていて、そして木漏れ日まで降り注いでいた。


「いきましょう」


手を差し出しながらそう言って、彼はまた笑った。
宮坂の手から全ての花が散り落ちて、ひかりに透けて舞う。

俺もこんな風に綺麗なまんまでいられたら。