・源田×不動
・韓国戦直後




















背後でいまだ覚めやらぬ歓声が聞こえる。オレは、オレ達は、世界への切符を手にした。さてオレは源田を地面に張っ倒した。そのままに腹にまたがってやって、正しく人殺しになるつもりで両手で首をひっつかんだ。力は入れてない。でももし、もしもういっぺんコイツがさっきと同じ言葉をほざきやがったら、今度こそありったけの力をこの両手に込めてやる。だから、オレは、問う。


「てめぇ、いまなんつった?」


源田はじいとオレを見つめた。キレイで静かで、それなのに、確かな力を持った目だ。コイツの目はオレのと違って、あらゆる光を反射して増幅させる造りらしい。胸糞悪い。キレイなものなんて嫌いだ。キレイなものほどの、ウツクシいものほどの、裏切るときのすさまじさ!!うんざりだ。
だから、オレは、おまえが、だいきらい。
…なんの話だっけ。


「おめでとう」


はっとした。

源田は、さっきよりもずっとゆっくりと口にした。

オレはまず親指に力を込める。そして人差し指、中指、薬指、イチ、ニイ、サン、シイ。首の硬さ。


「…源田ァ、オレはそういう意味の無ぇ言葉が嫌いだ。おめでとう、御目出とう、だと?心にもねぇこと口走んじゃねーぞ。それとも皮肉のつもりか?オレは、たったいまこの瞬間ウツクしく揺るぎない勝利が在るだけで、在るだけがイイんだ。それを、てめぇの薄ら寒い嘘なんて聞かせやがって、水さしてんじゃねぇ」


だからそんな嘘つくてめーは死ね。


「ふ、どう」


潰れた声だった。最期に源田は、オレのまぶたに指先で触れながら笑った。笑ってる。優しく、笑っている。

笑いながら、オレに言う。


「泣くな」