・うさぎガゼル×おおかみバーン
・普段のガゼバンに耳と尻尾付いた感じ
・続くかは未定




















ひとひとり寄り付かない暗い森、その森には凶暴なおおかみさんがすんでいるとのうわさです。人間はなかなか近寄れません。たくさんのうさぎや鳥もいて絶好の狩場だというのに、指を咥えて見ているだけでした。

そんな森にすむ一匹のうさぎさんがいました。名前はガゼルと云います。ピンとたった長い耳とふわふわのしっぽはきれいな銀色で、きれながの瞳はふかいふかいエメラルド色。
彼自身もそれらを自慢に思っているほどでした。

森の奥の大木、その根が作った洞穴のような空間がうさぎさんの寝どこです。そして大木のまわりに広がる草原はうさぎさんのごはんでした。今日も今日とて、豊かに生い茂る草原で草を食むガゼルがいます。
そこへやって来たのは、


「ガゼルっ」

「バーン、キミまた来たの?」

「腹へったんだよ」


やって来たのは森にすむ一匹のおおかみさんでした。名前はバーンと云います。ピンととがった鋭い耳とふっさりしたしっぽはきれいな赤毛で、まあるい瞳はまばゆいばかりの黄金色。
彼自身もそれらを自慢に思っているほどでした。


「まったく、キミは食い意地が張っているね」


森の奥の大木、その根が作った洞穴のような空間がガゼルの寝どこです。そして大木のまわりに広がる草原はガゼルのごはんでした。
うさぎさんはおおかみさんのごはんでした。
ガゼルはバーンのごはんでした。

ガゼルが草原でごはんを食べていると、バーンもごはんを食べにやってくるのです。


「それで、今日はどこが食べたいの?耳?しっぽ?それとも腕?」


ガゼルはもしょもしょと草をかみながら、バーンに向かって左腕を差し出しました。ちなみにガゼルの右腕はというと根元からありません。先月あたりにバーンが食べてしまったからです。


「んー今日はここがいい」


バーンが指さしたのは、ガゼルの左腕ではなく右足の太もも。ほどよくひきしまった足はしなやかで、バーンにはとてもおいしそうに見えるのです。


「ああそう。でも全部はよしてね。家に帰れなくなるから」

「わかった」


言うやいなや、バーンはガゼルの右足の太ももにかぶりつきました。鋭い牙は皮膚を食い破り、血が噴き出します。太い血管があったのでしょうか、ぶしゅっと飛び出た血はバーンのほほをしたたかに打ち付け濡らしていきました。ガゼルはというと涼しい顔でバーンを見ているだけでした。
そんなガゼルをちらと見上げたバーンは、訝しげに眉をひそめます。


「なぁあんた…本当にいいのかよ。こんな」

「こんなって、なんのこと」

「だってよお」


バーンは一旦ガゼルの太ももから口を離して、血まみれの口をぺろりと舐めました。
傷口からはどくどくと血がしたたり落ちますが、彼はやはり、痛がることもありません。


「いいんだ」


ガゼルは微笑みます。


「だってわたしは、キミにわたしを食べてほしいんだ。最初からそう言っているだろう」

「でも…」

「キミだって都合がいいからこうしている、ちがう?」


バーンは下を向いて黙りこんで、しっぽだけ手持無沙汰気にふさふさと揺らしました。
その様子を愛しげに見つめるガゼルは静かにバーンの手を取ります。


「それに約束したじゃないか。わたしがわたしをキミに食べさせてあげる代わりに、キミはわたしのお願いを聞いてくれるって」


ガゼルは血塗れた脚を引きずるように歩み寄り、右腕のない両腕でバーンを抱き寄せると草の上に押し倒しました。


「わたしのお願い、聞いてくれるかい?」

「あ、ああ、うん。そりゃあ…」

「ならば、」


バーンの犬歯の覗く唇にガゼルがそっと触れました。青い目を細め、恍惚とした表情を浮かべ。

流れ出た血はいつのまにか草原を赤く染めてゆきます。


「さぁ、わたしを食べてくれ」