・社会人風介×ヒモ晴矢
・途中かけ中途半田
・続くかは未定




















朝、目が覚めた6時4分。裸のままに寝てしまった肩が冷えて、くしゃみをひとつ。わたしによるわたしのためのシングルベッドの上。しかしながら、シングル用のベッドの上でありながら、わたしの隣にはわたし以外の人間が転がっている。私と同じに裸姿で、いぎたなく毛布にうずもれている同居人。真っ赤な前髪のかかる額は依然として幼い、わたしの同居人。


「…はぁ」


昨日は遅くまでこの同居人とねやごとに励んでしまった。夜更かしを少しは後悔している。
きっと彼は昼まで起きてこないだろう。だろう、というか、起きない。十中八九起きない。だが起きてこなくても問題はない。理由は簡単、彼はいわゆる仕事というものを持っていないから。つまりそういうことだ。対して、わたしは仕事というものを持っている。故に、今日のような水曜日の朝は通常通りあわただしくて然るべき。無言に、おもむろに、布団から抜け出す。
その際ベッドが揺れても同居人は目覚めなかった。床に脱ぎ散らかされた衣服のうち下着だけを適当に穿いて、ちらりとベッドの方を見る。同居人は目覚めない。

…問題はない、はずなのだ。


「さて」


とにもかくにも平日の朝だ。やることはおあつらえ向きにもたくさんある。さっとシャワーを浴びる、キチンと服を着る、髪の毛を乾かす、セットする(あまりうまくきまらなかった)、それから台所に立つ、フライパンを火にかけて温める、冷蔵庫から卵をひとつ取り出す(いや違う、ふたつだ)、卵と一緒に薄切りのハムも出す、油を引いたフライパンに二枚並べる、じゅわっ!

途端に騒々しくなる台所。夜更かしの低血圧の起き抜けのわたしには少々こたえた。しかしわたしがやらねば誰がやる。はぁ、つら


「ハムエッグ?」

「うわっ」


いきなり耳元に響いた掠れ声にびっくりして振り返る。


「…起きたんだ」

「おう」

「今日はずいぶん、早いんだな」


うなずく真っ赤な寝癖頭は、例の同居人だった。わたしの読みははずれ、もう起きだしてきたらしい。そのうえ服もちゃんと着ているとは…彼は事の翌日、なかなか服を着ようとしないのに。いろいろと、珍しいこともあるものだ。

しかしいつのまに背後をとられたのだろう。まったく気づかなかった。わたしの肩に顎を乗せ、フライパンを覗き込んでいる彼。ひどすぎる寝癖が目の端でちらちらするのがやや不快だ。


「なぁ、それハムエッグだよな?」

「そうだよ」

「やりぃ。なんかオレ、めちゃくちゃ腹減ってんの」

「わかったからとりあえず顔を洗ってこい」


昨夜、久方ぶりにあれやこれやと房事にいそしんだおかげで、同居人の顔はそれはひどいものだった。充血気味の目の下にクマ、頬には若干の涙の跡、血の気の引いた顔は蒼白。元はなかなかに愛くるしい童顔も、台無し。


「さっさとしろ」

「わーったよ」


わたしが洗面所の方を指さしてやれば、素直に歩いて行く。ずいぶんと従順になったものだなと思う。しばらくして、ばしゃばしゃと水音。


「晴矢、」

「あー?」

「………なんでもない」


同居人もとい南雲晴矢。
彼はすっかりわたしのペットの様に生きている。わたしはそれを咎めない。


「さぁ、ごはんだよ。おいで」


それだけのお話で。