・ガゼバンとグラン
・グラン視点
・「おもしろいはなし」と関係ありそうだけど関係ない
・コメディ気味




















最近はおかしいと思うよ。


がっしゃーん。朝、食堂でバーンがガゼルにとび蹴りをかました。ガゼルの後頭部にヒットする。彼は半ばもんどりうつように、前のめりに倒れた。顔面やっちゃったんじゃないかなぁ…うつぶせてるからよく見えないけど。
ガゼルが持っていたトレイの食事は方々に吹っ飛び、お味噌汁は散乱、ご飯はぶちまけられ、お茶碗に至っては陶器製だったので割れた。その様を見ていたアイシーは泣き出しレアンは叫ぶ。他のみんなだってざわぁってなったよ。なるでしょ。
一方、事の発端であるバーンはとび蹴りののち鮮やかに地面に着地したもよう。


「死ね」


握りこぶしに立てた親指をくいっと下に向けつつ、明らかなる嘲笑を浮かべるバーン。床に転がってるガゼルとかお椀とかを見下ろしながら気分良さげ。なんて悪い顔なんだバーン!アニメの悪役キャラみたいだよ!
また何が原因で痴話喧嘩してるのか知らないけどさ。ほんとに傍若無人な子たちだなあ知ってたけどさ。


「うっ…」


しばらくして、死人のようにピクリとも動かなかったガゼルがうめいた。死んでなかったのね。良かった。それは良かったのだけれど、でもなんだかやっぱり様子がおかしい。うめいたのち、うつ伏せの状態からゆっくりと起き上るガゼル。その背中から、何か黒いものが揮発しているように見える。黒いオーラ的な何かが。


「ふ…バーン…」


そう言ってバーンの方に振り返ったガゼルの笑顔に、嫌な影が差していたのは言うまでも無い。怪しげに吊り上った口角から一筋血が垂れていて、余計におそろしい。
バーンもやっぱり驚いたらしく、ひ、と小さな悲鳴を上げた。自分でやったくせにねぇ。


「バーン!」

「ぎゃああああこっち来るなあああ!!」


突如叫びながらバーンに飛び掛かるガゼル!鬼気迫る顔つきのガゼルに押し倒されるバーン!
お約束ですね、わかります。なんて、呆れたりどよめいたりしながら見守る俺含むその他大勢の真ん中で、見つめ合うふたり。で、どうすんの…って思ったら、先に動いたのはガゼルだった。おもむろにバーンの両頬をつかんだかと思うと、


「ん゛ん゛んんんー!!」


いきなり、バーンめがけてディープなキスとかをしだすわけだよ。バーンはそりゃあもう暴れだすよね。
ん゛ー!ん゛ー!って言いながら、ガゼルの胸をどんどんと叩くわなんわ大暴れ。取り囲んでいたダイヤモンドダストやプロミネンスのメンバーも「そろそろお助けするべきかな〜」みたいな顔しだすし。
ところがところが…


「ふ、むぅ…っ」


バーンの動きが緩慢になったかと思うと、次いで、あまぁい鼻声が。勿論バーンのね。アララ。
ガゼルの薄い胸板をせわしなくたたいていた両手は、ゆるゆるとその背中に回される。アラアララ。


「ん、んっ」

「っは…」


そのままバーンはガゼルを引き寄せるようにして…ってあああああもおおおおおなにこれふたりともうっとり目を閉じたままお互いのくちびるをちゅっちゅしてでも時折離れたと思ったらそれでも舌先を絡めつつ見つめ合っ…うっわもおおおおおおおおなにこれ衆人環視のドマンナカでええええええええ。


「はぁっ…バーン…!」

「がぜるぅっ…」


周りで棒立ちになってたメンバーも各々空気読みつつ、というよりそれぞれの保身のためもあってか、ぞろぞろと食堂を出ていく。ただひとり残ったオレは、目の前で組んず解れつする小動物達を淡々と見つめていた。ガゼルはとうとうバーンの服を脱がせ始め、バーンはとうとうガゼルの服を脱がせ始める。その仲直りの一部始終を癪だから最後まで観てやったけど、ちっとも楽しめなかったです、たぶん。


おもしろくない。