夕食を終えて、ようやく固かった雰囲気が元通りになってきた。空閑と葉村が作ったというケーキもフルーツたっぷりでとても美味しかった。風羽は空閑と葉村に何度もお礼を言って、幸せそうに一口ひとくちを大切に食べていた。

(良かった。彼女が幸せそうで)

 今日の片付け当番は広瀬だった。米原は明日の授業のための準備があるらしく早々に部屋へ戻り、他のメンバーは居間でテレビを見ながら風呂の順番待ちをしている。今は風羽が風呂に入っているはずだ。

「ユーキ、ちょっといいかい」
「うわっ」
「……何だい、妖怪でも見たような声出して」
「俺の勘違いじゃなければ、十九波さんは妖怪ですよね?」
「それにしたって、知り合いが来たってのに、その反応はちょいと酷くないかい?」
「後ろからいきなり来たら誰だって驚きますよ……」

 広瀬一人のところに十九波が来るのは珍しい。十九波はいつも風羽を通して土地浄化の話を自分達に伝えていた。よく考えると、二人だけ(もしくは一人と一匹だけ)で話すのは初めてかもしれない。

「で、何か用ですか?」
「ああ、今時間はあるかい?」
「これを洗い終わったら暇ですよ」
「そうかい、じゃあ待っててやるからさっさと済ましな」

 どうせなら手伝ってくれればいいのに、と思いながら、広瀬はまた一枚、皿を洗う。

「風羽のことで話があるんだよ」

 十九波のその一言で、ようやく戻りかけていた空気が、もう一度変わってしまった気がした。