※たかのさんリクエスト「女子トリオ+マドンナ/女の子同士キャッキャ」

※FD共通バッド前提


「ねえねえ風羽ちゃん、夏休み何やった?」
「寮のみなさんと海に行きました」
「何だとっ」
「ええええ!? 何その定番イベント! 羨ましい!」
「憎い……! 菅野さんと海でキャッキャウフフししやがった月蛙寮の男共が憎い……!」
「落ち着け佐希子」
「とても楽しかったです」
「良いなあ。私も海に行きたいよー」
「ふむ、では行きましょうか」
「え?」
「え?」
「海でキャッキャウフフ致しましょう」



■よしこのはなし

 自分達でバスの時刻を調べて予定を組んで、前日には朝絶対寝坊したりしないように目覚ましをセットする。

「えへへ」

 芳子はバスタオルを最後にぎゅっとボストンバッグに詰め込み、へらりと緩んでしまう口元のままに笑う。こうやって友達と出掛けるなんて青春そのものじゃん! と心は浮き立つばかりだ。

 芳子が夏休みを理由に詰め込んだアルバイトの網をかいくぐって、ようやく見つけた三人共通のお休みだった。保護者がいないと言うことで風羽達寮生のようにお泊まりはできないけれど、それでも友達とひと夏の思い出を作れるのは嬉しい。

「バスタオル良し! 水着良し! 日焼け止めは明日の朝塗っていくから机の上、と」

 奮発して買ったちょっとお高い日焼け止めは、水に濡れても落ちにくいという触れ込みだ。手のひらサイズの小さな容器を机の上に置くと、携帯電話を手に取ってベッドに寝転んだ。配信ニュースによれば明日の天気は快晴。お出掛けには最適だけれどお肌には天敵だ。

 紫外線予想に眉を寄せていると、突然画面が暗転する。「わ、」と慌てて仰向けからうつ伏せになって携帯を見つめていると、すぐに「Calling」の文字が浮かんだ。この携帯電話は少し動作のタイムラグが長い。

「はいはいもしもーし。どったの佐希子」
「芳子? 出るの早いな」
「ちょうど携帯触ってたから」
「そう。あのさ、ウォータープルーフの日焼け止め持ってる? 私買い損ねてて、気付いたのが今でさ」
「持ってる持ってる。貸してあげるから着替えの時にでも言ってよ」
「ありがと。ああそうそう。水着、下に着ていく?」
「そのつもりー……あっ下着下着! 忘れるところだった」
「貴様は小学生か。忘れたら悲惨なことになるぞ」
「危なかった! 佐希子ありがとー」
「どういたしまして」

 あれ、と芳子は口を噤む。こんなことを聞くために、佐希子は電話をしてきたのだろうか。佐希子が基本的にあまり連絡にまめな方ではないから、二人で電話をすることはそう多い方ではないし、電話をするときは大体芳子からかけることが殆どだ。

「なあ佐希子」
「何だヨッシー」
「……もしかして、楽しみ過ぎて落ち着かない?」

 ガタタッ、と何かが落ちる音がする。

「べべ、別にそんな訳じゃない!」
「ふーん」
「……もう良い! 聞きたいことは聞けたからもう寝る」
「はいはーい。じゃあ明日、バス停でね」
「お休み、芳子」
「おやすみー」

 パチン、と携帯電話を閉じて、充電コードを繋ぐ。別に日焼け止めの話なんか、明日バス停で会った時にでもすれば問題無いのに、わざわざ電話してくるなんて。

「楽しみだなー」

 下着を一セット棚から取り出しながら、芳子は明日の海を心待ちにしている。