広瀬には、味方が一人もいない。もはや孤軍奮闘と言っても過言ではなかった。

「お前いい加減折れろよ。めんどくせーな」
 葉村は呆れたようにそう言うし、

「菅野さん、生き生きしてるね」
 空閑は見当違いなことを言ってにこにこしている。

「あーあ、スガちゃん可哀想!」
 法月はわざとらしく彼女に同情して、

「お前も案外意地っ張りなのな」
 米原は肩をすくめて苦笑するし、

「風羽、頑張れよ!」
 戸神に至っては事情もまるで理解しないままに彼女を応援する。

「女の子に恥をかかせちゃ駄目だよー広瀬くん」
 川奈はからかいながら広瀬をたしなめるし、

「菅野さんに片思いされるなんて死ねばいいのに」
 兼子はもはや敵意剥き出しの嫌みしか言わない。

 そして当事者の片方である彼女はと言うと、

「皆さんも応援してくださっていますので、菅野風羽、全力であなたを射止めてご覧にいれます」

 そんな彼女には悪気なんて存在しない。あるのは広瀬に向かう真っ直ぐな恋心だけだ。

 つまり今、広瀬には一人も味方がいなかった。