「広瀬先生、すっぱい葡萄の話を覚えていらっしゃいますか?」

「え……?」

「私は、諦めるのは嫌です。すっぱいに違いないと、そう言って諦めるより、食べてすっぱいことを思い知りたい。それがどんなに茨の道でも、あなたを失うよりはずっと良い」

「……菅野さん」

「私の七年分の恋心を舐めないでいただきたい。私の心を否定しないでください。……優希くん」

 少女は、美しく笑う。全てを包むように、頑なな広瀬の心を溶かすように、強く広瀬を抱き締めて、柔らかく微笑んでみせる。

「私は、あなたが好きなのです」

 恋する少女はまるで花のように笑う。