館論破

最終章『終曲』前編

館論破
最終章
『終曲』



地図が公開されました[ 最上階 ]



その鍵は7階と裁判所をつなぐ階段の踊り場にある小さな扉の鍵だった。
扉を開けるとそこには、高級そうな椅子と机、たくさんの機械と棚に並べられた本や新聞が薄暗い部屋に重苦しく並べてあった。


「あら、これ通信用の機械じゃない。うまくいけば外と連絡が取れるかも!」
「イッコーさま、お詳しいんですのね」
「まぁねー。あっだめね、これ壊れてるわ」


そんな中、私はあるビデオカメラを見つけた。


「これは……?」
「みなさん!これを見てください!」


篠芽さんは棚から新聞を取り出して見せてきた。


『超高校級狩り、一般人含め被害者7300人越える』
『超高校級の生徒たちが絶望へ対抗 希望となりえるか』
『世界中で希望と絶望の戦い激化』


「……本物の新聞のようですわね」
「あまり、信じたくありませんが……。問題は、この新聞の日付が未来の、半年後のものであることですね」


篠芽さんは「もしかすると、僕たちは記憶を消されているのかもしれません」と続けた。

私はビデオカメラの電源をつけた。何か映っていないかと思ったのだ。


「これ、途中からの再生ですね」


巻き戻してみると、イクトさんがビデオでなにかしゃべっているようだった。全員で見れるように机に置いて、再生ボタンを押した。



『ザー…ザザー……
「あ、再生したかな。やあ、ごきげんよう。
これを見ているのはきっと僕自身だろうけど、ひとりだけで見るんじゃなくて、できれば17人全員で見てほしいな」

まず、状況を説明する。
僕たちはここの館に閉じ込められているわけじゃない。
ここの館で籠城しているといったほうが正しい。

僕たちは絶望に堕ちた人たちの、超高校級狩りにあっていた。
彼らの人数は多すぎて、僕らでは対処できなかったし、実際死にかけていた。

……あの子は、館の主人はよく頑張ったと思う。
この館を外界から隔離して絶望からの侵入を拒んだのさ。
安全な場所を得ることとと引き換えに、僕たちは外に出ることができなくなった

そこで僕からのお願いだ。
もし、誰かがこの館を出られたなら、地下室の像に隠してあるタイムカプセルを持って行ってくれないだろうか。

タイムカプセルの中には、僕たちが外でやるべきこと、やりたかったことが書いてある。
できる限りでいいから実行してほしい。

僕たちはどんな決断も受け入れるよ。
でも、もし館の主人を暴いて外に出るのなら、あの子も連れて行ってあげてほしい。
きっとできるはずだ。

頼んだよ、僕の親愛なる友人たち」』



「……終わりですね」
「地下室に行きましょう。それを見ればなにか……」


放送が鳴る。どうやら時間切れのようだ。



『それではお客様、最後の裁判でございます。どうぞ悔いが無いよう心ゆくまでお楽しみください』




【裁判所】
これが最後の裁判。ここですべてが終わる。見破られるわけにはいかない。これ以上誰も失いたくない。

みんなを守りたい、これが願いだ。

館の主人は誰にでもなりうる。たとえ誰かに殺された人でも、誰かを殺した人でも。
しかしながら、私は一つの決め手を持っていた。館の主人はあの人しかいなかった。


【館】
超高校級狩りで、全員が重傷を負った。
なんとか館に逃げ込んだはいいものの、対抗するどころか全員が生き残ることさえ不可能な状況だった。
そこに、やってきたのだ。

悪魔が。

悪魔たちは契約を持ち掛けてきた。
自分達に魂を渡せば、館で全員が永遠に暮らすことができる、と。
私は契約を交わした。
こうして奇跡的に全員でまた暮らすことができた。
外では数分でも館のなかでは何十年もの時が経つ。月の位置はほとんど変わらない。



「もう、私はいきていたくないんです」



ここに私たちが籠城してから数十年以上経った頃、透さまはこう切り出した。


「どうしてですか、みんな死にたくないと言っていたではありませんか!」


透さまの腕をつかもうとしたら叩かれた。


「ええ、あの時は!でも、これから永遠にこの館で生きるぐらいなら、あの時死んでおけばよかったです」
「ふざけないでください!どうしてそんなことをおっしゃるのですか!!」


口論はずっと続いた。両者ともに引かぬまま口論を続けた。
これでは埒が明かない、とユリウスが提案をしてきた。


「ここはひとつゲームをしませんか?」
「こっちが勝ったら契約解除、こっちが勝ったら契約続行。ゲームは一度切りでもう二度とできないよ、いい?」


ミカエルが二人の間を楽しそうに行き来した。


「構いませんよ、これで死ねるなら本望です」

「私は……」





【黒幕】
超高校級の極道 橘弥宵

【願い】
大切な人を守れるような強さが欲しい



「そうです、私が館の主人です」



橘さんはじっと前を見据えた。


「私だって、こんなコロシアイをしたくありませんでした。…でも、これでおしまいです」


「私を館の主人に選ばないでください」



「そんなの通ると思ってるの?」


豊島さんが橘さんをにらんだ。


「私に責任があるからこそ、通さなければなりません。
もし私がこの裁判で負けてしまったら、契約が切れてしまいます!
皆で生き残ることが、出来なくなってしまいます

契約内容は「魂と引き換えに館で全員が永遠に暮らすことができる」。
つまり、契約さえ結んでいれば、今まで死んでいった皆様をよみがえらせる事ができます。
私は、みんなで今を生きたいと願っています」


橘さんは決意を目に宿した。




「言ったでしょう、全員で生きましょうって」



……

全員で生き残る道がある。ならそちらのほうが良いのではないか?
しかし、私たちは永遠にここを出ることができなくなる。




「朝が恋しいよ」

「今いる全員でここを出るためにも」

「無くしたほうがいい過去などないんですよ」

「誰も死なないなら、それに越したことはないよ」

「ここにはいない誰かを守りたかった」

「守りたいもん守って悪いかよ」

「あたいらは未来を歩んために、願いをかなえよごったっただけ」

「ただここから出るだけなんて、何も変わらないじゃない」

「こんな、こんな気持ちを知るぐらいなら、いっそ外に出なければよかったのに」

「全員で幸せになれとは言わへんけど、全員で不幸になることはあらへんやろ」

「生き残ったほうがつらい時もあるから」

「繋いで行けよ、俺たちの思いを」

「私は、みんなで今を生きたいと願っています」

「ねえ、透くん。君は明日を生きてくれよ」




私は……

 橘さんの意見に



  賛成だ
→ 反対だ



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