館論破

最終章『終曲』後編



橘弥宵が館の主人に決まりました




「結論が出ましたね。それでは、契約は解除となります」
「楽しかったよ!この館ももうすぐ終わりだけどね!」



「「これにて終幕、盛大な拍手を!」」



「待って下さい!外に出ない方がいいに決まっています!!私たちは…級友なんですよ…!こんな終わり方間違っています!」

「その考えのデッサンは狂っています!」


橘さんは目を見開いた。


「なっ…!」
「もう終わりにしましょう」

「そもそも、外に出る必要がありません!危険ですし、なにより絶望であふれています!友人が自ら危険なところに行くのを見過ごせません!」


「その推理おブス〜!」


豊島さんが反論した。


「外がどうとか関係ないわ、私が出たいから出るって言ってるの」




【願い】
あの女とのタイマンで築き上げて来たものを失った。超高校級の才能も、地位も、名誉も、仲間も、夜を彩った鮮やかなピンクの色も。
あいつも同じ目にあえばいい。

【生存】
元超高校級のギャング 豊島和幸

【願い】
天我満(超高校級の座を奪った人)を不幸にしたい





「でも、それでは死んでいった方たちはどうなるのですか?!死んでいった皆さまが報われないではありませんか!!」

「それは違います!」


篠芽さんが反論した。


「まだ、報いることはできます!タイムカプセルを探して、僕たちのやるべきことをやりましょう」




【願い】
父は憧れだった。有名な演劇部に入っていた父は僕に色んなことを教えてくれた。観客を魅了する父に追いつきたい。父のように、もっとたくさんの人に演劇を見て貰いたい。

【生存】
超高校級の演劇部 篠芽美乃麗

【願い】
もっと自分の演技を色んな人に見て貰いたい




「そんな……どうして……」


橘さんが絶望に満ちた顔をしていた。


「私も貴方の気持ちはわかります。でも、今のままじゃ死んでいるのと変わりないじゃないですか」




【生存】
超高校級の水彩画家 雪村透




「私は、未来を生きるんだ!」






ミカエル「もういいかな?」
ユリウス「そろそろ幕を下ろしましょう」


ユリウスとミカエルが消える。同時に館が揺れる。裁判所のガラスにひびが入る。


「崩れます!早く逃げないと!」
橘さんは膝をついて「どうして……」と茫然としていた。
その橘さんの手を、篠芽さんがとった。


「さあ弥宵さん!立ってください!」


4人が階段を駆け下りていく。
何かが崩れる音、落ちる音、大きな揺れが止まらない。


「なぜ、私を助けたんですか?」
「弥宵さんと同じ理由ですよ、目の前にいて見殺しにするわけにはいきませんから」
「都合よく死ねると思わないでよ?アンタだって生きなさい」
「……ありがとうございます」


私以外の3人は崩壊する館を素早く駆け抜けていき、出口にたどり着いた。
最後尾は私だった。
私もようやく出口の近くまで来た。


「さあ、早く!シャンデリアが落ちそうです!」


扉は開いていた。
豊島さんと篠芽さんは外に出ることができたようだ。
しかし、私だけが間に合わなかった。


「透ちゃん!」
「透くん!」


二人が手を伸ばす。天井が崩れる音が聞こえる。手は届かない。
……ああ、私はここで死ぬんですね。
せっかく生きようと思えたのに。







「それは違いますわ」






橘さんが私の手を強く引く。
そして彼女は私と入れ替わるようにシャンデリアの真下に立った。



【願い】
願いを言えと言われた。
代償さえ差し出せばどんな願いも叶えると。
外は絶望に満ち、皆は疲弊しきっていた。致命傷の者もいた。
だから願った。悪魔に願ってしまった。
皆と生きたい。生きていたい。
皆を守るためだと思っていた。
あの時の私は…間違えていたのでしょうか?


「透さま、私は皆さまを守れたでしょうか?」






最後の最期に、橘さんはほほ笑んで、私をそっと押した。
シャンデリアは轟音を立てて、私の目の前に落ちた。

館が崩れていく。







…………

……



「あ〜!やっと見つけた!」


豊島さんが比較的崩れていなかった地下からカプセルを取り出した。


「……見てください。これ、写真ですよ」


その写真は集合写真だった。全員が楽しそうに笑っている。
空が明けていく。
地平線から光が差し込んで、あたりを照らした。


「……ああ、朝です」







「さて、これにて物語は終了です、お客様。

……えっ?この後彼らはどうなったのか?
残念ながら、それにはお答えできません。
これは不思議な館で起きた物語。
これからの彼らについては、彼ら自身が物語をつくっていくのですから。

……お時間のようです。
それではお客様、ごきげんよう」





館論破

終幕





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