あまあまが好きな方はご注意ください
遥也が愛されたままがいいかたは見ない方がいいです


俺には遥也が必要だ。遥也が居なければ俺がこのつまらない学園でわざわざ特待生になってめんどくさい風紀なんかする意味がない。本当はもっと早くに手に入れるつもりだったのに予想よりも遥也は聖にべったりで引き剥がせなかった。聖にとっても辛いことだったんだろうと思う。自分の両親を自殺に追い込んだ奴らの子供のおもちゃになるなんてよく今まで遥也を殺さなかったものだ。俺だったら迷わず殺す。俺の場合は妹だ。妹を殺した奴の息子にいいようにされるなんて耐えられないし耐える気もない。そもそもそんなことさせやしないけれど俺にだってどうしようもないことはある。例えば不慮の事故、天災、それに病気。これだけはどうしようもない。中流階級の俺の家には金も権力もない。今この瞬間も苦しむ妹を助けたくても助けられない。俺のかわいくて愛しい妹は体に色んな欠陥がある。でも金さえあれば何とかなるのだ。遥也の家と同じくらいあれば妹は20歳まで、いやもっと生きられる。だから俺には、俺の妹には遥也が必要で俺のものにしなきゃいけない。遥也は三男だからあの家の権力を思うままに扱えないがそれでも俺には充分だ。俺の妹の状況を知った遥也は大好きな俺を繋ぎとめるためにいろんな事をしてくれている。すぐには無理でも一年後、二年後には妹は走ることもできるだろう。家族水入らずでピクニックだってできる。なによりも妹が生きられる。それだけで俺は嬉しい。幸せだ。この幸せの為には遥也のそばに張り付いてないといけないがロボットみたく愛してるといって馬鹿みたいに抱きしめていればいいのだから簡単だ。酷いことをしているつもりはない。遥也だって誰かに本当にあいされることを望んでいるのではなくてただいうことを聞いて自分から離れないペットが欲しくて愛に飢えているというよりは一人が寂しいだけ。餓鬼なのだ。あんなに執着していた聖だって俺と付き合ってからは然程気にも留めていないし。聖を愛していたのは本当でもその程度。まあそんなことどうでもいいか。ただ俺の妹が生きている間は遥也が俺をはなさなければいい。遥也が望むように愛して甘やかして、この学園を卒業した後はこいつの秘書だのなんだのになってしまえばいい。艶を取り戻した髪を柔らかく撫でる指先が震える。愛している。そう、俺はこいつを心から愛している。感謝している。勿論聖にも。こうなる決定打を与えてくれてありがとう。一つだって欠けたら妹は助からなかった。比喩でもなんでもなく世界が輝いて見える。生まれてきてくれてありがとう遥也。遥也に囁く好きだとかなんだとかは全部嘘という訳でもない。妹を助けてくれた恩人なのだから嫌いな訳がない。かわいい遥也、お前が俺に落ちてくれてよかった。妹が生きる限り一緒にいることを誓うよ。絶対に離さない。嬉しいだろ?もしも考えたくはない未来が起きてしまったら俺は遥也のお守りなんか放り投げるけどもそうしたって今度は次の俺みたいな奴が出てくるから、よかったな、寂しくなんかないぞ。本人が気付こうとしていないだけで俺のかわいいこいつは愛されているのだ。彼氏としては気づかないままでいてもらわないと困るからいつまでも遥也には鈍いままでいてほしい。鈍感な遥也はかわいい。
腰に回された腕をちょうどいい位置に調節しながらぎゅうぎゅう遥也を抱きしめて俺も少し眠ることにした。家族で過ごす夢が見られることを祈りながら。

忘れられたウェンディ

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