悔しい。いつもいつもみっともなく焦がれるのはこの俺なのだ。噛み付いたって苦笑いしながらゆるく抱きしめられておしまい。ちがう、あいつは分かってない。同じくらい俺を愛して欲しい、もっと強くあいつから迫ってきてほしい。俺もあいつもおんなじゃない、多少無茶しても問題ない。遠慮なんかいらない。そういってもごまかすみたいに甘くキスされてうやむやにされて元通り。癇癪を起こしたってあいつは変わらない。というかあれの表情が変わったところなんていつ見ただろう。柔らかく優しくほほえんでるだけ。はしたなく乱れる俺を見つめる目にだって欲望のよの字だってみえやしない。悔しい。あいつは、なんにもわかっていやしないのだ。恋人であるはずの俺といちクラスメイトの扱いに差がないことに俺がどれだけの言葉を飲み込んでいるか分かろうともしていない。少しくらい特別扱いしてくれたっていいだろう。俺を誰だと思っている?生徒会長でお前の恋人様だぞ?特別な存在であるべきでもっともっと愛すべきだ。
 そう言う事は俺のプライドが許さない。だからあいつは気づかない。いつまでも。今だって。目の前には大声をあげて知らない奴と喧嘩をする瑞樹。ずるいずるい。そんな顔俺にはしてくれないじゃないか。おかしいそんなの、恋人である俺に見せない顔をするなんて、目の前が真っ暗になる。握りしめた拳がぬめった。ゆっくりてのひらを開くと俺の嫌いなトマト色。すっぱいものが喉までせりあがってくる。動けない。脳みそがどろどろになっていく。一歩後ずさる。あいつは気づかない。もう一歩後ろへ。瑞樹の怒鳴り声。怖い怖いあれはこれはなんだ?気づいたらがむしゃらに走って走って心臓がいたくて喉がきゅうとしまって汗がたくさんでて足がもつれて鼓膜は壊れたみたいに瑞樹の初めて聞いた声をリピートし続ける。俺以外には笑顔以外も見せるのか。どうして。
 がうん、瑞樹の部屋の扉蹴り開けてがくがく震える右足を前に出して左足を前にだしてそれを繰り返してふらふらリビングまで進んで足がもつれて転ぶ。情けない。寝ころぶともっと息が苦しくなった。瑞樹の全部はこの俺のものじゃなきゃいけないのに。喜怒哀楽は全部全部俺のものだ。だって俺が瑞樹のことをすきなんだから。瑞樹だって俺のことがすきなんだから。瑞樹瑞樹瑞樹。甘ったるくて包み込んでくれてなんでも許してくれて瑞樹以外に触られた俺を愛してくれた瑞樹。ひゅうひゅう鳴く喉が煩わしい。がりり掻き毟ってあーあまた汚れちゃった。
 「みず、き」
 すきあいしてるお前に夢中で狂っちゃうよ。狂った俺も瑞樹は愛してくれるだろうか。瑞樹。俺の体温でぬるくなった床が気持ち悪くてずるずる這う。冷たい。瑞樹の手に似ている。そのままじいっと丸くなっていた。瑞樹早く帰ってこい早く早く。あそこで話しかければよかった怒鳴ればよかった。俺の瑞樹。俺のところに早く帰ってこい。
 「あれ、会長きてるー?」
 やっと祈りが届いたのか普段のやわい声がする。いつもなら押し倒すが今日はもう動きたくない。綺麗なフローリングに爪を立てる。
 「会長?寝てるの?だめだようこんなところで、ベッドいこう」
 ゆっくりゆっくり近づいてきた瑞樹は俺の隣に膝をついて頭を撫でる。
 「ん、なんかあったか?この傷どうした」
 大好きなてのひらが今だけ疎ましい。
 「あれなんだよ」
 「へ」
 じっとり睨み付ける。
 「さっき、中庭、男、何」
 一瞬きょとんとしてから苦虫をかみつぶしたようなそんな顔も初めて見た。いら立ちに任せて跳ね起きて瑞樹の服に手をかける。
 「俺にはあんなことしてくれないのに!なんで俺のしらないとこで俺のしらない男なんかと!あ!知っててもいやだ!瑞樹なんかしね!しぬな!」
 「ちょ、ちょっと会長おちつこう、ね?俺のはなしきいて、あれは」
 「うっせえ!うっせえ瑞樹のばかやろう!うわきもの!」
 「は!?なんでそうなるの俺が瑞樹以外と、あーそのあれだ、そういうことするわけないだろ!」
 「照れる瑞樹かわ…じゃないじゃあなんなんだよ説明しろよ浮気だったらお前殺して俺も死ぬ!!その前にあの男も殺す!」
  「あいつは殺してもいいけど会長はしんじゃだめ!ていうか説明するから!時間をください!」
 ぎゅうと肩を強くつかまれてまっすぐ見つめられる。深くため息をついた瑞樹が重たそうに唇をあけた。
 「あんね会長、あいつはおれのいとこなの」
 「俺そんなのしらんかったぞ」
 「まあいう機会なかったし。それであれが今反抗期でな、あれの親が俺にたしなめてくれっていわれちゃってさあ」
 眉をハの時にして話す瑞樹に嘘をついているそぶりはない。
 「それがこう、素直に聞くやつじゃないっていうか素直だったらこんなことにはなってないんだけど、まあこじれちゃって喧嘩になっちゃったの。浮気なんかじゃないよ。というか会長はなんでそんなことになっちゃったの」
 「そんなの、俺が見たことない顔俺以外にするからだろ!」
 「会長のことなんで怒鳴らなきゃいけないの?俺はお前を愛してるんだからそんなことしないよ」
 ぐちゃぐちゃになった髪をすかれる。
 「みっともないところ好きな人には見せたくないんだ」
 飴色のやさしい目。俺はこれに弱い。焦りだとかなんだとかまとめて消えていく。そうっと抱きしめられてその広い背中に腕を回して強く強く抱きかえして瑞樹の耳元にそっとくちをよせてすまないと囁く。それにくすぐったそうに体をゆらして瑞樹が羽みたいに軽くキスを返してくれた。子供だましみたいなそれにどうしようもなくなる俺はもう瑞樹を手放すことなんてできやしない。そんなこと許さない。瑞樹。口の端にかみついて、おそろいの傷。俺と瑞樹はずっと一緒だ。ずうっとずっと。


あなたとわたしでシュガーポットに沈みたい



すいません大変おそくなりましたリクエストの嫉妬ヤンデレ会長ちゃんと穏やか攻めです!会長ちゃんは受けです!あままで書いてる自分が胃もたれしてきました。うへ。書き直しリクくれたひとのみうけつけてますんでもっとビターにとかお気軽にどうぞ!!
 
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