放課後並んで歩きながらたわいもない話が途切れた時立花は決まって別のところを見つめていた。そこに必ずいるのはあれ。よく見ればかっこいい眼鏡をかけたおとこ。あいつは顔を緩ませている。やさしい顔。あまり表情豊かじゃないあいつが微笑む。俺にはそんな顔はしない。しかめっ面で困ったようにしている。笑いかけられたことさえない。夕焼けの廊下、俺は立花をみてあいつはあれを見てあれは立花を見ている。そうして俺は溝の向こう側に手を伸ばしてあいつの袖を引く。見せつけるように首に腕を回して曲げられたくちびるを無理やり奪って目を閉じる。
今立花と一緒にいるのは俺だ。やさしい立花に無理やり迫って押し倒して手に入れた。間違っていても構わない。立花が俺を好きになると言ってくれた。それ以外どうでもいい。それは変わらない。後悔なんてしていない。いいだろう、俺だってあいつが好きなんだ。愛している。付き合っているのは俺だからだが近いのは俺だ。冷たい立花に乗り上げてかぶさって覗き込んだ欲情した目に満足する。今誰を想っていてもいつか俺を見てくれればいい。
けれどいくら俺の気持ちが変わらなくても学園は変わった。梅雨が終わったころ、転入生が学園を引っ掻き回してぐちゃぐちゃにしてあれも巻き込まれた。風紀委員長の立花はあれを守るために駆け回って這いずり回って、最後にあったのはいつだっただろう。メールも電話も返ってこない。焦燥とほんの少しの諦めが溜まっていく。立花とあれのこころも変わらなかった。変えられなかった。
「すまない。おれはやっぱりあいつが好きなんだ」
知ってる。そんなこと誰よりも、あれよりも知っている。
「会長が嫌いになった訳じゃないんだ、ただもう終わりにしないか」
でもこれは知らない。意味が分からない。だってお前は俺を好きになってくれるんじゃなかったのか。努力するといったのはなんだったんだ。
「自分勝手だとはわかっているが、俺には会長を好きにはなれない。本当にすまない。会長ならだれか俺よりもいいやつがいる。俺がいうようなことじゃないかもしれないが幸せになってくれ」
もう一度すまないと頭を下げて出ていく立花。ぐらぐらゆれて崩れ落ちる。全部、全部壊れた。幸せってなんだ。俺はお前がいないと幸せになれない。金魚のようにくちを動かす。立花、立花、行くな行かないでくれ、俺には分からない、何もわからない。伸ばした手は床に無様に転がる。掠れて潰れた声が喉を叩く。俺だってお前が好きなんだ。お前だけがすきで、ずっとずっとお前だけを。今までもこれからも俺はお前しかいなくて、幸せなんか見つからない。どこにもない。外では太陽がどす黒い雲を引き裂いて顔をのぞかせている。瞼を閉じても光に目を焼かれて、もう何も見えない。


先生、しあわせってなんですか


謝るのも申し訳ないくらいに遅くなりましたすみません!まだこのサイトを見てくださってるかどうかわかりませんが振られるかわいそうな会長という素敵な設定をくださったハクさんにささげます。蛇足ですけど会長のこの後は病みルート一直線です。委員長たちはリア充になります。本当お待たせして申し訳ありませんでした!
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