∴あおい×そうま


俺の親衛隊長は人気がある。俺の恋人なのだから当然だけど不愉快なものは不愉快。ごつい野郎の気持ち悪い視線を浴びながらこっちによってくる葵をじっとり睨む。
「おまたせしました相馬さま、行きましょうか」
ふんわり笑う葵に答えずに歩き出す。後ろにいるやつの顔は見えないがへらへら笑ってついてきているのは確かめなくても分かる。周りの鬱陶しいものに目もくれず俺だけに従っている。ほんの少し歩調を緩めると葵が横に来た。俺の肩よりちょっと上ぐらいにある茶色のつむじ。アーモンド型のぱっちりしたヘーゼルの目がこちらを見上げて微笑む。どうかなさいましたか。何でもねえ。くちをぎゅっと閉じて早足に部屋まで歩く。決して照れたとかそんなんじゃない。ふふっと笑う葵に周りがざわめいた。自然と早足になる俺にぴょこぴょこ着いてくる葵は楽しそうだ。俺はちっとも楽しくない。特に今日は。畜生あの会計どうしてくれよう。むっすりしたまま寮のエレベーターに乗り込む。ふたりきり。
「相馬さま、どうしました?」
いつもより機嫌が悪い俺に不思議そうに聞いてくる葵から目を反らす。すぐに俺の部屋があるフロアについていつの間にか絡んでいた指を引っ張ってドアの前までいく。慣れたように鍵を開ける葵の背中を追って一旦着替えた。ゆったりしたスウェット。葵と色違い。本当はこの部屋はひとり部屋だけれど葵と一緒じゃないなんてありえないから同じ部屋に住んでいる。先に着替え終わってベッドに座っている葵が弄っていた携帯は奪って放り投げた。葵は特に咎めない。そのまま葵の膝に顎をのせて座り込む。俺が床に座ることになるがこの体制が一番すきだ。葵の右足にコアラみたいにくっつく。
「ね相馬、今日何かあった?言わなきゃ分からないよ」
外よりもやわらかい声色にぐぐっと眉間にしわを寄せる。苛立ちで涙腺が緩んだ。でもまだ泣きたくない。
「相馬?泣きたくなるくらい嫌なことあったの?誰がそんなことしたの、言ってみなさい」
「…会計がお前のこと貸せって言った」
「え?」
「だから!会計がお前とヤりたいって…俺にはもったいないって!葵は俺のものなのに!なんで、なんで!」
「落ち着いて、泣かないで相馬。相馬、俺はお前のものだよ。大丈夫、頼まれたって会計と寝たりしないから。…あのば会計…」
わしゃわしゃ両手で撫でられる。顔を葵に向けるとまぶたにキスを落とされてちょっとこぼれた水分をぽったりしたくちびるが吸いとった。すぐに離れていくそれをべろり舐めるとちゃんと舌を絡めるキスをしてくれる。ざりざりこすれる感触が気持ちいい。物足りなくなって手をついていた膝に乗り上がると腰に以外と筋肉がついた腕が回る、ふわふわの茶髪に指を差し込んで葵を抱き締めた。
「俺はお前しか興味ないよ。あのちゃらいのが何言おうが知らない。心配しなくていいからね」
鎖骨にちくり痛みが走る。
「本当か?本当に俺を捨てないのか?葵は俺のものなんだな?会計なんかのになったら俺葵の手足ちぎっちゃうかも。そうしたら俺が葵の面倒ぜーんぶ見るんだ。そんで閉じ込めるぞ。あと会計は殺す」
「ふふ、嬉しいなあ。でも俺面倒見てもらうより相馬の面倒見るのが好きだな。俺が居なかったら生きてけないぐらいになってほしい」
「もうなってる。葵は?俺が居なくなったらどうすんの」
「死んじゃう。相馬が居ないなんて耐えられない。相馬、俺のこと好きだよね」
「ちがう、大好き。愛してる。葵も俺のこと大好きだよな?」
てのひらを葵のほほに添えて目を合わせる。
「もちろん大好きで愛してる。相馬も浮気しないでね。俺以外のひとにくっついて行っちゃだめだよ?」
「俺はこどもじゃない。なあ葵、」
ねだるように葵のくちびるをなぞるとすぐに欲しいものをくれた。ああしあわせ。誰にもやらないこれは俺のもの。
「相馬はキスが好きだね」
「いんや、葵が好きなだけ」
ふふんと笑って赤くなった葵のほほを舐める。あまい。葵はどこもかしこも飴みたいだ。調子に乗って首筋を食んでいるとスウェットの裾から手を突っ込まれた。びりびり電気がからだを貫く。
「ねえちゃらいのは他に何か言ったりやったりした?」
「はあ?特になんもねえよ。そういえばやたら引っ付いてきた気がするけど。何でそんなに気にすんの?まさかお前」
「ない。ないから。俺が好きなのは相馬だけだってば。というか引っ付いてきたって何?どこ触られたの!?きれいきれいしたげるから全部言いなさい!」
案の定キレだした葵にばれないようにこっそり笑う。ああ、嫉妬するのはいやだけどされるのはいい。愛されてることを確認できるから。うまくいった。押し倒されて葵の華奢なてのひらに身を任せる。気持ちいい。本当は会計が俺が好きだなんて知っている。でも葵が欲しいなんて言われたら不安になるし葵以外に触られて気持ち悪くなったのもあるから全部が全部演技じゃあなくても今までの半分はわざと。良かった。葵は俺が好きみたいだ。でももっともっと俺に夢中にさせなければ。周りにも認めさせてやる。明日はきっと立てなくなって葵が生徒会室に行く。そのときに俺に葵が欲しいなんて言ったことを後悔させてやろう。葵は俺のもの。誰にも渡さない。どこにも行かせない。


あなたの心臓にはわたしだけが住んでいいのよ



リクエストありがとうございました&ハッピーバースデー!!の気持ちを込めてどんさんに捧げます。相馬が俺様というかただのヤンデレになっちゃいましたすみません!これで良ければどんさんの好きにしてやってください
あとはおまけ会話文です。翌朝の会計と葵。結局バカップル

「失礼します、書類をお届けに参りました」
「あれー、葵ちゃんじゃん。どしたの」
「相馬さまが今日は学校に来れないので僕が代わりに」
「へー、何か合ったの?」
「会計さまが余計なことをおっしゃったからですよ。言っておきますが僕はあなたにちっとも興味ありません。それにあなたの本命は僕じゃなくて相馬さまでしょう」
「あは、ばれちゃったー」
「また何かやったら相馬さま近づけさせませんよ。今回は一週間ほど距離をおかせます」
「一週間?!ひどい!」
「当然です。あ、でも会計さまには感謝してますよ」
「どーして」
「あの後葵、葵ってくっついて離れてくれなかったんです。その代わり睡眠不足になりましたけどお、れ、の、相馬がかわいいから仕方ないですよね。もう本当かわいかったです。まあいつもかわいいんですけど特に昨日は甘えたで、知ってます?いや知ってたら潰しますけどうちのこ恥ずかしいときに噛みつく癖があってほら、こんなに跡がついちゃったんです。困っちゃいますよねー。しかもからだ洗いっこするときにすまなそうにしょんぼりするんですけど自分から謝るのはできないから噛んだとこ子犬みたいに舐めてくれるんです。毎回毎回理性が持ちません。どうしたらいいんでしょう。結局昨日、というか今朝また気絶させちゃって。それで朝謝ったら何て言ったと思います?しあわせだったからいい、ですよ!あのまま朝ごはんと一緒に食べなかった俺を褒め称えたいです。腰がたたなくてだるいだろうにしあわせだったからって!もうこっちがしあわせです。っと、すいません、電話が…もしもし相馬?なあに?…ああ、大丈夫。何にもないよ。…うん、うん、ごめんね。でも書類とどけなきゃでしょ。すぐ戻るから泣かないの。…ふふ、俺も大好きだよ。当たり前じゃない。…うん、あと少しだけいいこにしててね。…ふう。すみません会計さま、相馬が寂しくなっちゃったみたいでってどうして泣きそうなんですか?まあ俺には関係ありませんが。それよりかわいいかわいい俺の相馬が泣いている方が一大事なのでもう行きますね。それじゃ失礼しましたー」

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -