君だけが僕をしあわせにできるんだよ
2011/12/31 09:24

深夜静まりかえったヴァリアー邸の奥にあるザンザスの執務室にまっすぐ向かう。一週間の任務中彼はずっと自分の帰るときを待っていたに違いない。ザンザスは自分がいなければ何も食べられない。眠ることさえままならない。それを表にはださないだろうけれど。
重々しい扉の前に立ちノックもせずに開け放つ。間髪入れずにグラスが飛んできた。それを避けると次はウォッカの瓶。ぎりぎりで避けて主に近づく。予想通りすこし痩せたように思う。
「う゛おおおいちゃんと食べてたのかあ?ルッスをあんま困らせんじゃねえぞお」
「うっせえカス、てめえがさっさと帰らねえからだ。この能無しが」
ぎりぎり睨まれるがその顔も青白くて怖くない。慣れたとも言うが。回転式の椅子を回し極悪な顔をするザンザスを間近で見つめると顔色の悪さがよく分かる。はあとため息をつくとおもいっきり頭を殴られた。
「い゛っ!何すんだあ゛!」
ぎろり一層強く睨まれる。への字に曲がったくちは何も言わないけれど何をして欲しいか、何が不満なのかはよく伝わってくる。これ以上不機嫌にさせれば自分の命以上にザンザスが危ない。主のきれいに筋肉がついたからだを床に膝を付いたまま抱き締めた。つられてザンザスも椅子から落ちてそのままスクアーロに倒れこむ。
「すまねえなボスさん、遅くなっちまった」
宥めるように首筋から耳たぶまでくちびるで辿ってもザンザスの腕はだらり下がったままだ。
「…カスが」
それでもその声から怒気が抜けているからこれで正しい。
「とりあえず寝るかあ?その後飯食おうぜえ」
スクアーロの首にザンザスの顔がくっついているから表情はわからないが無言を肯定ととって抱き上げる。自分と同じくらいの体格だが問題はない。横抱きにするといつもなら燃やされるが今はぐったり目を閉じている。依存されていると思う。それが嬉しいとも思う。スクアーロがザンザスがいないと生きられないようにザンザスもスクアーロがいないと生きられないようになればいい。もう一生離しはしない。そう誓った。やわらかいベッドに寝かせて上着を脱ぎ捨てて隣に横たわる。冷えないように同じシーツにくるまって閉じたままのまぶたにくちづけて微笑む。
「ただいまザンザス、よい夢を」






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