2012/04/01 23:11 「かーいちょ、だーいすきだよ」 けれどにこにこ笑いながらのたまうこれは時間に関わらず嘘なんだろう。なんでわざわざ生徒会室まで言いに来たのか分からない。嫌がらせか。そうなんだろうな。 「んー?なんか反応してよつまんないなあ」 いやすごくとまどっているぞ。鍛え上げた表情筋のおかげで表に出ないだけだ。こんなこと言えるはずもない。 「今日はエイプリルフール、か」 分かりきったことを言った。頭がまっしろで言葉が見つからない。分かってたことにとまどう自分を殺す。 「もーつまんないつまんない!こうもっとなんかないの?怒るとかなくとか嘘言い返すさあ!」 泣きそうなのも伝わってない。いいことだ。 「なんでそんなことしなきゃいけないんだ。俺はどっかの誰かのせいで忙しい」 「この堅物。仕方ないじゃんあのこほっとけないし。それに最低限はやってるでしょ?」 あのこ。言ったときの柔らかい顔。大好きと俺に言った時も俺を抱いていた時もしなかった顔。とっさにくちを噛む。それに何を思ったのか椎名はいやらしく笑って俺を抱き寄せて耳元に顔を近づけてきた。変わらない香水。熱。心臓よ止まれ。 「それともかいちょーさんは俺がいなくてさびしーのかなあ?」 今日はエイプリルフール、嘘を言ってもいい日。 「ああ。ああ寂しいよ。お前があんなやつといてここに来ないなんて、寂しくてどうにかなりそうだ」 むかしのように抱き返して低くささやく。これは嘘。今日、今このとき吐き出したものすべては嘘。椎名の息が耳朶にぶつかった。 「うれしーなあ。ごめんねかいちょー俺、あのこといるときもずうっとかいちょーのこと考えてるよ」 うなじを撫でる爪先。痛くない。悲しくなんかない。暴れる脈拍を抑える。 「かいちょのこと誰よりも愛してる」 今日言ったことは一生叶わない。それにどんな意味がある。今日のことがなくてもどうせ一生いうことはない。 「俺も愛してるよ、椎名」 そっとくちづけたほんとうがどうか伝わりませんように。視界の端に写った時計は12時を指していた。 すき、うそ、きらい、うそ、わからない |