2012/01/07 17:52

「アーサー泣いてるの?」
インクで汚れたほほを伝う涙は黒い。こいつにはお似合いだ。散らばる便箋には滲んだ文字が必死に連なっている。アーサーがアルフレッドに何通も手紙を出していることは知っていた。それは開かれる事なくアルフレッドの手で燃やされていることも。赤い綺麗な火が飲み込むところを見つめる瞳のいろはぐちゃぐちゃだった。彼は愛せなかったのだ。
「どうして泣くの?こうなることは分かっていたでしょう。こんな手紙書いたって無駄だよ。もうアルフレッドは独立したしあれはアーサーを嫌ってる」
またぐしゃり歪んだ手紙を奪って目の前で千切る。乾ききっていなかったインクが指先を汚した。
「ばかだねアーサー。お前は本当ばかだ」
青白いくちびるから驚くほどあかい血が溢れる。吸血鬼みたいに吸いとって困惑と怒りに染まった目に笑いかける。
「本当にアルフレッドがずっとお前の弟のままでいるとでも思ってたの?」






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