無題 | ナノ



「意味わかんねぇよ、なに言ってんだよ」


シズちゃんが眉を寄せて近寄ってくる、こんな女嫌だよね。もっと大人な態度取らなきゃって思えば思うほど、上手くいかない。頬を伝う涙は止まらず、シズちゃんの眉間のシワはどんどん深くなる。


「別れるって言ってるの」

「……それは、決定したことなのか」

「うん」

「…………これ」


シズちゃんが右手を差し出す。ぼやけたシズちゃんの靴から視線をあげれば、少し悲しそうな顔をしたシズちゃんが見えた。

「これ、今日渡そうと思ってたんだ…要らなかったら捨ててくれ」

「なに?」


大きな手から出てきたのは、綺麗にラッピングされた小さな箱。よく見ると私の大好きなショップのロゴが入ってる。


「これ……」

「手前、この店好きって言ってたから」

「なんで…?」

「なんで?なんでって……今日が1年記念日だから」

「いつ買ったの?」

「悪ぃ、さっき買ってきた」


何を悪く思ってるのか私には皆目見当がつかないけど、こんな物買ってるだなんて、全く思ってなかった。
もしかして………


「それに、トムさんの知り合いの人に選んでもらった…どんなのが良いのか分かんなかったし」


涙は止まった、驚いたり、嬉しかったり、恥ずかしかったり…

「ごめんなさい。やっぱり、別れたくない。今日のお昼頃に……シズちゃんが女の人と歩いてるのみて、勘違いして……」

「は?」

「ごめんなさい」

「じゃあ、他に好きな奴ができた訳じゃねぇのか?」

「えっ??シズちゃん意外に好きな人何ていないよ!!」

「……そうか、良かった。」


そう言ってシズちゃんは格好よく笑った。あんまり格好良くって、私は見とれてしまった。


「でもシズちゃん、年上が好きなんでしょ?」


恥ずかしさを隠すように皮肉を言ってみる。


「急に何の話だ?」

「ぼんキュッぼんな大人の女の人が良いんでしょ?」

「何の話だ?」

「シズちゃん、私ぼんキュッぼんに成ることは、無いかもしれないよ?」

「手前がなに考えてんのかわかんねぇけど、心配すんな俺は手前の事で頭が一杯だから、よそ見してる暇なんてねぇよ」




「……………この天然たらし」


結局、シズちゃんには適わなさそう。



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