河合
「男の人って石鹸の匂いがする」
「え?」
ヒーターのリモコンを手にした所で根岸の妙な一言が耳に入った。
「しますか?」
「うん」
自分の腕の匂いを嗅いでみても特別何か変わった匂いというものは感じなくて、ただの自分の匂いしかしなかった。
まてよ。もしかしたら、その石鹸の匂いというのは僕じゃなくて別の。そうだ、そうに違いない。この間の養護教諭のことがあるんだ。
「アバズレ」
「それ、私のこと?」
「そうです」
「最悪」
どうやら怒ったらしい。本当のことを言っただけだよ、何が悪い。生憎僕はお前に最悪なんて言われる覚えはないんだ。
「もう帰るね」
頭にきたついでに、僕はとっさに突き飛ばした。根岸を。
「ちょ、え、うそ」
国語科教室で倒れ伏せる彼女を見ているとまるで――。
つぎ