鉄の中で上を見上げるお年頃




持ち帰るとすぐに鏡台に飾ってある宝石箱に収めた。このアメジストで17つ目になる。収集家というわけじゃないが綺麗なものをコレクションして眺めるのが好きだ。美しくて綺麗な、自分の好きなものに囲まれて私は生きていきたい。だから私の部屋は好きな色、家具、空間で出来ている。無色の自分を包んでいくように、煩わしいものは何もない。

「テレビ買ったんだね」

突然現れた背後からの声に箱の蓋を乱暴に閉じてしまった。イルミさんの来訪には色々な意味で心臓が締め付けられる

「必要と感じたから」

「その割には埃が被ってるよ」

「何ですか、今日は何の用ですか」

「ななこに会いに来たんだ」

「それで?」

「それだけだけど」

子供がするのと同じ曇りなき眼は正義か悪か。彼の場合は曇りも濁りもなく、ただの底深い穴蔵同様と言えるけれど。覗きこみたくない穴だ。首に巻きついてきた腕を外して鏡に写る自分の顔を見つめる。

「やめてください」

「何を?」

「必要以上に触れてこられるの好きじゃないから」

「どうして。欲しいものがあったら自分のものにして触れたくなるはずだよ」

「そういうのは、色々と面倒が付いて来るから…」

外した腕がまた絡まって頬から近付いた顔が唇を合わせてくる。わずかにそらした隙間から言葉を投げた。

「見ているだけでいい」


まえ