反響に誤解を見るお年頃
「おかえり。少しお邪魔してるよ」
返ってくるはずのない、ただいまの返事が私の部屋にこだましている。お気に入りの赤のソファーに座りテーブルの上に足を乗せている侵入者。軽く上げられた手で交わされようとしている挨拶、普段通りの堂々としたイルミさんがそこにいた。
「どうやって入ったかは聞きません。何しに来たんですか」
「別段、急ぎの用があって来たわけじゃないんだけどさ」
殺される危険性さえなければ、あなたは暇なのかと一度問いただしてみたい。
「お腹空いてる?」
「空いてません」
「俺も空いてない」
疲れている肩がいっそう下に落ちた。分からない、まるっきり。呆気に取られたまま私はイルミさんの隣に腰を下ろした。
「ごろごろしに来てみた」
「はっ?」
まさか文字通り転がり出したりしてしまうのだろうかとイルミさんを見たが、さすがにそういうわけではないようだった。
「あ、ついでに泊まるから」
持参の寝巻きが、ちらりと覗く。
まえ