短編
※…背後注意
◎…その他

an artificial smile





「おはようございます、坊ちゃん。」



黒いの長身の…
寝起きなのもあり、ぼやけてよく見えない…



「…ん」



その黒い正体はファントムハイブ家に仕える執事、セバスチャン・ミカエリスだった。



「本日の予定はダンスレッスンが午前中に入っております。午後からはファントム社の新メニューについての会議が…」

「…ダンスはいい。後日に回せ。」

「…御意。」




いつもの朝、いつもの場所。
セバスチャンと会ってから変わらない毎日。




「坊ちゃん、女王陛下からお手紙が届いております。」

「陛下から?読んでみろ。」



女王の憂いを排除する…これも僕の仕事だ。



「…坊ちゃん、これは今までで一番難しいかもしれませんね」
「なんだって!?一体何が書かれ―」

「今日一日で100回笑顔を見せなさい…とのことです。」

「!?」




笑顔?
笑顔なんて、笑い方なんて当の昔に忘れている!
…何故女王はそんなことを...




「坊ちゃん、私に向かって100回笑うというのはどうでしょう?」

「…何をふざけている」

「ふざけていらっしゃるのは女王陛下では?」

「お前…ッ!」




ぎゅうううっ!
セバスチャンが頬をギュッとつまんできた。




「何っ…するんだ!放せ!」

「笑ってください?坊ちゃん。」




その後は地獄と言ってもいい程だった。最悪そのもの。
セバスチャンにずっと頬をつかまれ笑うまで放さなかった。




「…坊ちゃん、もう夜ですよ?最後まで笑わないとは素晴らしいですが、女王陛下の憂いが―」

「ふざけるな!あの手紙はお前が作った物だろう!」

「今頃お気づきとは、随分と…鈍いのですね?坊ちゃん…」

「お前…ッ!遊んでいたのか。」


奴は顔に笑みを浮かべていた。なんとも腹が立つ笑い方で。


「…もういい。お前のせいで疲れた。寝る。」







「全く、坊ちゃんといったら…無理矢理な笑顔を見るより、無防備な寝顔のほうが可愛らしいですね。」



なんだか唇に触れたような気がした。気のせい…だったか。



=END=
2010.12.01

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