短編
※…背後注意
◎…その他

贈りのもの



3月。
毎日が寒かった冬とは違い、太陽の温かさを感じる。

ファントムハイヴ家の庭にも春はすぐそこまでやった来ていた。
セバスチャンは街へ買い出しに出ていた。




「坊っちゃーん!!え、えっと…アルじゃなくて、フラ…?なんとかさんから荷物がとどきました!!」


「…差出人の名前も覚えられないのか。」




シエルはそんな使用人、フィニアンに深くため息をついた。
荷物を受け取ったにもかかわらず、人の話もろくに聞けない、覚えられないとなると、あきれるしかなかった。



「中は何だ?」


「植物のようですね。」



後ろからセバスチャンの声がした。
荷物をじっと見ている。



「…帰ってきていたのか。…植物?食用か?」


「あなたの頭の中には鑑賞用という言葉は無いのですね。」


「五月蝿い。」



シエルはセバスチャンをギッと睨んだ。
その間にセバスチャンは荷物を開けた。
中には白色の花が入っていた。



「エリカの花!」


「エリカの花?何だそれは?」


「フィニも名前だけなら知っているんですね?この花は…ヨーロッパ原産のものですね。あまり出回らないと聞いたのですが。」


「…エリカ」




シエルは何か思い出したようにつぶやいた。


「…あの死神か。この花のことを話していたのは。」


「そうでしたね。坊ちゃんに何か意味しているのですかね…?」


「どういう意味だ。」


「花言葉の中には、孤独もあれば、幸福な愛もあります。」




セバスチャンがシエルを見て含み笑いをする。
何か考えているに違いない。




「…」


「私たちは幸福な愛のほうをとりましょうね?」


「何をふざけたことを。愛など…」


「私たちの間の愛をもっと実らせなければ。ということで坊ちゃん、寝室に行きましょう!!」


「ふ、ふざけるな!」




シエルの顔が赤くなる。




「ふざけていません。…調子に乗っているだけですよ。」








ひょいっと持ちあげられ、2人は寝室に。
真昼間から、2人の愛は…









…はたして、差出人は誰だったのだろうか。




「街で見つけてきた花は、やはり良かったですね。」





ある執事が微笑んだ。


=END=
2011.3.2


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