短編
※…背後注意
◎…その他

血を求める者


今日は珍しいセバスチャンの休暇の日だった。
外は大雪で。







「…坊ちゃん!!!どうしたんですだか、その傷は!」



坊ちゃんの膝から流れる血。
かなりの出血だった。



「外が凍っていて、転んだだけだ。大した傷ではない。」

「でも血が出てるですだよ!!手当てを…」
「大丈夫だ。問題無い。」



そう言って血を出しながら、自室へ向かう。セバスチャンのいない今、変わりに手当てなど出来る奴などいない。分かってるからこそ、手当てを頼まなかった。
ドクドクと流れる血、ズキズキと痛みを増す脚…我慢せざるおえない。



「…ッ!………はぁ。」


ため息が出るばかりである。
そしてある思いが口に出ていく。


「…セバスチャン…帰っては……来ないか。」




セバスチャンがいない今、寂しいという気持ちではないが、それに似た思いが心の中を駆け巡る。帰ってきてほしい、と。




「…休暇を頂いたと思ったのですが、結局無しですか。」

「セバスチャン!!何故ここに…ッあ!!」




シエルをベッドに座らせ、怪我した膝を見る。血は止まっていない。




「こんなに血を流して…ヴァンパイアにでも血をあげるおつもりですか?」

「馬鹿を言え。ヴァンパイアなどこの世に存在する訳ないだろう。」

「悪魔や天使、死神がいるのにですか?」

「変なことを言ってないでさっさと手当てしろ。」

「…痛いですよ?」




セバスチャンがそう言った途端、シエルの膝に激痛が走る。




「…ッ痛っ…いッ………いッや…だ」

「坊ちゃんの血は…何味ですかね?」




セバスチャンがシエルの膝を舐めあげる。
不思議なことに、痛みとともに傷は消えていった。




「…うっ……………ハァハァッ」

「これくらいの痛みに負けるなんて、情けないですね?それとも私がいないという心の痛みのほうが上ですか?」

「う…五月蝿い。…他の手当ての仕方があるだろう!!」

「坊ちゃんの血を頂くのは、私だけで十分です。」

「何だ?意味の分からないことを。お前が欲しいのは魂だろう、馬鹿が。」

「…ええ。魂も血も肉も私のものですから。簡単には取られませんよ。」







セバスチャンが不気味に笑う。
…窓の方を見て。

セバスチャン以外は誰ひとり、その存在を知らない。



=END=
2011.1.17

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